サイモン(読み)さいもん(その他表記)Herbert Alexander Simon

デジタル大辞泉 「サイモン」の意味・読み・例文・類語

サイモン(Neil Simon)

[1927~2018]米国の劇作家・脚本家。都会を舞台にした喜劇を得意とし、米国の演劇界を代表する劇作家として活躍。「おかしな二人」でトニー賞を受賞すると、同作の映画化に際して脚本を手がけるなど、映画界にもヒット作を残した。「ヨンカーズ物語」ではピュリッツァー賞を受賞。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイモン」の意味・わかりやすい解説

サイモン(Herbert Alexander Simon)
さいもん
Herbert Alexander Simon
(1916―2001)

アメリカの社会科学者。とくに経営学と経済学の分野で伝統的な学説を批判し、組織および意思決定の問題に新境地を拓(ひら)いた。また情報科学、認知科学、コンピュータ科学などの新しい分野の開拓者の一人であり「人工知能の創始者」と認められている。1916年ウィスコンシン州ミルウォーキーで出生。1936年シカゴ大学政治学科卒業。1943年同大学にて博士号を取得。その後カリフォルニア大学行政研究所、イリノイ工科大学教授を経て、1949年以降カーネギー・メロン大学の経営管理学の教授。1978年ノーベル経済学賞を受賞。

 初期の著書『Administrative Behavior』(1945。初版の邦訳『経営行動』は1965年発行。1976年の原著第3版増補改訂により邦訳書も1989年全面新訳)では、現代組織論の創始者チェスター・アービング・バーナードChester Irving Barnard(1886―1961)の思想の継承と発展を試み、組織の意思決定過程の分析を中心とする新しい理論枠を提出した。その後、ジェームズ・ガードナー・マーチJames Gardner March(1928―2018)との共著『Organizations』(1958。邦訳『オーガニゼーションズ』)で、その組織理論をさらに体系的に展開した。意思決定論では『The new science of management decision』(1977。邦訳『意思決定の科学』)、『Reason in Human Affairs』(1983。邦訳『意思決定と合理性』)のほか、多数の論文を発表した。

 さらに情報科学や行動科学の分野でも、『Models of Man』(1957。邦訳『人間行動のモデル』)、『The Sciences of the Artificial』(1969。邦訳『システムの科学』)のほか、理論形成と実証研究、理論の応用に幅広い活動を行った。

 サイモンは1960年以降に世界各地への歴訪を始めた。日本については、晩年の自伝的著書『Models of My Life』(1991。邦訳『学者人生のモデル』)のなかで、1969年の最初の訪日以後、10回以上も訪れた日本各地での楽しかった思い出を語っている。2001年ペンシルベニア州ピッツバーグの病院で死去、84歳であった。

[土屋晃朔]

『松田武彦・高柳暁・二村敏子訳『経営行動』(1965・ダイヤモンド社)』『宮沢光一監訳『人間行動のモデル』(1970・同文舘出版)』『吉原英樹・稲葉元吉訳、高宮晋監修『システムの科学』(1977・ダイヤモンド社)』『稲葉元吉・倉井武夫訳『意思決定の科学』(1979・産業能率大学出版部)』『佐々木恒男・吉原正彦訳『意思決定と合理性』(1987・文真堂)』『松田武彦・高柳暁・二村敏子訳『経営行動――経営組織における意思決定プロセスの研究』新版(1989・ダイヤモンド社)』『安西祐一郎・安西徳子訳『学者人生のモデル』(1998・岩波書店)』『稲葉元吉・吉原英樹訳『システムの科学』第3版(1999・パーソナルメディア)』『J・G・マーチ、H・A・サイモン著、土屋守章訳『オーガニゼーションズ』(1977・ダイヤモンド社)』『H・A・サイモン、D・W・スミスバーグ、V・A・トンプソン著、岡本康雄・河合忠彦・増田孝治訳『組織と管理の基礎理論』(1977・ダイヤモンド社)』『H・A・サイモン、C・E・リドレー著、本田弘訳『行政評価の基準――自治体活動の測定』(1999・北樹出版)』


サイモン(Neil Simon)
さいもん
Neil Simon
(1927―2018)

アメリカの劇作家。ニューヨークに生まれ、ラジオやテレビの台本作家を経てブロードウェーに進出。『カム・ブロウ・ユア・ホーン』(1961)での成功以来、『裸足(はだし)で散歩』(1963)、『おかしな二人』(1964)をはじめ、ほぼ1年に1作の割合でヒットを連発、アメリカを代表する喜劇作家としての地位を確立する。中産階級に属する都市生活者の人生の喜怒哀楽を、ギャグを交えた巧みな台詞(せりふ)でユーモアとペーソスあふれる喜劇に仕立て上げることに定評がある。『ジンジャーブレッド・レディー』(1970)以後は、ほろ苦い人生の実相をより作品に反映するようになり、1980年代には自伝的三部作を発表し、その第二作『ビロクシー・ブルース』で念願のトニー賞を獲得した。ほかの代表作は、トニー賞、ピュリッツァー賞を同時受賞した『ヨンカーズ物語』(1991)など。自伝に『書いては書き直し』(1996)、『第二幕』(1999)がある。映画化された作品も多く、『ブルースが聞こえる』(1988)、『ブロードウェイ・バウンド』(1991)などがある。1983年に彼の功績を記念して、ブロードウェーの一劇場がニール・サイモン劇場と改称された。

[一ノ瀬和夫]

『酒井洋子他訳『ニール・サイモン戯曲集』全5巻(1984~93・早川書房)』『酒井洋子訳『ニール・サイモン自伝 書いては書き直し』(1997・早川書房)』『酒井洋子訳『ニール・サイモン自伝2 第二幕』(2001・早川書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「サイモン」の意味・わかりやすい解説

サイモン
Herbert Alexander Simon
生没年:1916-2000

アメリカの経営学者。ウィスコンシン州に生まれ,1936年シカゴ大学を卒業,同大学大学院に進み43年政治学の博士号を獲得した。イリノイ大学を経て49年からカーネギー・メロン大学経営管理学教授。その業績は行政学,経営学,経済学,社会学,心理学など多岐にわたり,それぞれの分野で第一級の評価を受けている。78年ノーベル経済学賞受賞。経営管理論,経営組織論に対する彼の貢献は,〈意思決定〉という概念に集約できる。彼の組織観は,(1)人間はアリ(蟻)同様きわめて単純な行動システムであり,その認知能力には限界がある,(2)それゆえ人間の意思決定は,合理性を志向しながらも経済学で使用する極大化基準というよりは,満足化基準に依拠せざるをえない,(3)その範囲で最大の合理性を確保するために組織構造(階層的システム)を構築し,組織内情報処理を単純化することによって個人の認知能力を克服する,というものであった。さらにサイモンは,組織における人間行動を説明するには,社会学における行為や役割といった概念では不十分であり,より分析単位を小さくした個人の意思決定前提にまでつめる必要があると主張した。このような考え方は,C.I.バーナード理論を継承発展させた《経営行動》(1945),およびそれまでの組織理論を統合した《組織》(1958)に表されている。
執筆者:


サイモン
Marvin Neil Simon
生没年:1927-2001

アメリカの劇作家。現代アメリカの風俗,とくに中産階級の生活を描いた軽妙な喜劇を多作し,商業的成功を収める。代表作は《裸足で公園を》(1963初演。以下初演年),《おかしな二人》(1965),《二番街の囚人》(1971)など。その後,やや深刻な劇に転じたが不評。晩年は《第二章》(1977),《ブライトン・ビーチの思い出》(1983)など,自伝的な作品を発表している。映画シナリオミュージカルの台本も多い。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サイモン」の意味・わかりやすい解説

サイモン
Simon, Herbert Alexander

[生]1916.6.15. ウィスコンシン,ミルウォーキー
[没]2001.2.9. ペンシルバニア,ピッツバーグ
アメリカの経営学者。 1936年シカゴ大学政治学科卒業,同大学院で政治学専攻。 42年以後イリノイ工科大学助教授,同教授を経て,49年からカーネギー=メロン大学教授。アメリカ経営科学会副会長,国家調査委員会行動科学部会会長など要職を歴任。行動科学的な組織論研究の第一人者で,コンピュータ利用と意思決定などの新分野でユニークな分析を試みた。その組織理論のおもな内容は,(1) 組織における各個人の意思決定の過程に関する理論,(2) 組織における人間行動の理論,(3) 組織的均衡の理論などである。 78年には「経済組織内部の決定過程についての先駆的研究」でノーベル経済学賞受賞。主著『経営行動』 Administrative Behavior (1945) ,『人間行動のモデル』 Models of Man (57) ,"Organizations" (58,J. G.マーチと共著) ,『コンピュータと経営』 The New Science of Management Decision (60) ,『システムの科学』 The Sciences of the Artificial (68) 。

サイモン
Simon, Neil

[生]1927.7.4. ニューヨーク,ニューヨーク
[没]2018.8.26. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の劇作家。フルネーム Marvin Neil Simon。ニューヨーク大学とデンバー大学に学び,テレビの脚本家を経て,ブロードウェーに進出。主としてニューヨークを舞台に,巧みなプロット,性格づけのしっかりした登場人物,当意即妙滑稽台詞を用いて日常生活を描く喜劇で人気を得た。代表作は『おかしなカップル』The Odd Couple(1965),『サンシャイン・ボーイズ』The Sunshine Boys(1972),自伝的色彩の濃い『思い出のブライトン・ビーチ』Brighton Beach Memoirs(1983)など。ほかにミュージカル映画のシナリオも手がけた。

サイモン
Simon, Sir John

[生]1816.10.10. ロンドン
[没]1904.7.23. ロンドン
イギリスの医師。 19世紀における衛生学の最高権威といわれる。ロンドン市最初の公衆衛生医官 (1848~55) で,下水道をつくり,各郡市もまたその指導を受けた。 1855~76年,中央政府の最初の医官となり,国の衛生行政を指導した。さらに国立研究所をつくり,権威ある報告書を公刊し,予防接種制度を確立,多くの保健法をつくった。そのなかに 66年の国民衛生法があるが,これは全国民的に,科学的,強制的に実施された最初の国民保健法である。 87年貴族に列せられ,バス勲章 K. C. B.を授けられた。

サイモン
Simon, William Edward

[生]1927.11.27. ニュージャージー,パターソン
[没]2000.6.3. カリフォルニア,サンタバーバラ
アメリカの政治家。ラファイエット大学卒業。ウィーデン社やサロモン社の重役を歴任して,1973年財務省内の要職につき,1974~77年財務長官。 1974年には石油政策委員会の議長も務めた。

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百科事典マイペディア 「サイモン」の意味・わかりやすい解説

サイモン

アメリカのフォーク歌手。アート・ガーファンクルArt Garfunkel〔1941-〕と2人でフォーク・デュオ,サイモン・アンド・ガーファンクルを結成,1964年デビュー。名曲《サウンド・オブ・サイレンス》をはじめ,既存のフォーク・ソングの枠にはまらないサウンドと,サイモンの書く思策的な歌詞で世界的人気を得る。1970年デュオ解散後はソロとして活躍,アフリカ音楽やレゲエ,ゴスペルなどを吸収し,幅広い演奏活動を展開している。
→関連項目イシカタミア

サイモン

米国のユダヤ系劇作家。中産階級の観客を意識した軽妙でユーモラスな作品を多く書き,ブロードウェー史上屈指の人気劇作家となった。代表作に新婚夫婦を描いた《裸足で公園を》(1963年),二人の男の奇妙な共同生活を描いた《おかしな二人》(1965年),都会で暮らす夫婦の悲喜劇《二番街の囚人》(1971年)など。《ブライトン・ビーチの思い出》(1983年)にはじまる自伝3部作もあり,映画のシナリオやミュージカルの台本も多数書いた。

サイモン

米国の数理社会科学者。カーネギー工科大学の教授。管理経営学の領域で出発し,行動主義的方法により組織論,オペレーションズリサーチの分野で多くの先駆的業績をあげた。近年は人間の合理性には限界がある,という限定合理性bounded rationalityの考え方を提唱した,として注目される。主著《管理行動論》《組織論》《人間のモデル》。1978年ノーベル経済学賞受賞。

サイモン

アメリカのコミックライター,エディター。ニューヨーク州ロチェスターの貧しいユダヤ系一家に生まれる。1930年代から40年代のアメリカン・コミックスの興隆期に,様々なキャラクターを創造した。キャプテン・アメリカというスーパーヒーローを,ジャック・カービーと共に創りだしたことで有名。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「サイモン」の解説

サイモン Simon, Bernard E.

1912-1999 アメリカの医師。
1937年からニューヨークのマウント-サイナイ病院につとめ,1965年形成外科部長。1955年他の医師2名とともに,同病院にまねかれた「原爆乙女」25人の形成治療にあたる。昭和60年(1985)来日し,治療した女性11人と再会した。1999年8月1日死去。87歳。ニューヨーク出身。ジョンズ-ホプキンズ大卒。

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世界大百科事典(旧版)内のサイモンの言及

【経営学】より

…学問の基本的性格を問う科学性または方法論に関する模索は今日の経営経済学においても依然として踏襲されており,批判的合理主義,構成主義ならびに批判主義(フランクフルト学派)は,方法論上の立場を代表している。H.A.サイモンの意思決定論が広く管理論の主流をなしている現状からすれば,ドイツ経営学の立場もアメリカ経営学の立場も理論上接近をみせつつあるといえよう。【高橋 俊夫】
【アメリカ経営学】
 現実の社会のなかで,組織体を通じて行う経済活動の重要性が高まっていくにつれて,これに対する科学的研究の必要性が意識されるようになってきた。…

【経営・経営管理】より

…すでに述べたように,人間関係論の影響が大きくなると,組織の問題においてフォーマル組織と並んでインフォーマル組織が強調されたり,また管理者リーダーシップが強調されるようになる。
【〈組織的意思決定論〉〈動機づけ理論〉のインパクト】
 一方,C.I.バーナードに始まり,H.A.サイモンによって発展させられた意思決定論の影響もあらわれてくる。すなわちそこでは,経済人の超合理性と人間関係論の情緒性のどちらにも組みしない人間観――情緒的に反応するだけではなく,情報収集の能力と将来結果の計算能力において現実に制約をもっており,その制約の内で合理的に満足できると思われる代替案の選択=意思決定を行うところに管理人(かんりじん)administrative manの基本特性を見いだす人間観を提出する。…

※「サイモン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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