日本大百科全書(ニッポニカ) 「ふきん」の意味・わかりやすい解説
ふきん
ふきん / 布巾
食器をふいたり、食物を濾(こ)したり、あるいは蒸すときなどに用いる布。普通食卓や調理台をふく台ぶきんとは区別している。ふきんということばがいつごろから使われだしたかは不明であるが、『延喜式(えんぎしき)』に「手巾(しゅきん)」とあるのは、僧侶(そうりょ)などが手ふきに用いた長い布の腰帯(手巾帯)のことで、「たのごい」「てのごい」などと読まれていた。「てぬぐい」とよばれるようになったのは室町時代以降のことで、当時は白地の長い麻布を適当な長さに切って用いたといわれ、手巾同様ふきんもこのころから使われていたとみてよいだろう。日本で木綿の栽培、紡織を始めたのは1510年(永正7)からで、紡ぎやすく、しかもじょうぶで肌ざわりのよいことから、しだいに麻布にかわって木綿が普及し、現在でも和風のふきんには晒(さらし)木綿が使われている。
大きさは35センチメートル×45センチメートルのものが一般的で、材質には木綿のほかに麻、混紡(綿と麻、綿とレーヨン、綿とポリージック)、不織布、使い捨てのペーパータオルなどもある。吸水性があってけば立たず、手や器によくなじむしなやかさのあるもの、また乾きやすくてじょうぶなものが使いやすく、用途によって使い分けたり、大小あわせてそろえておくと便利である。湿っているふきんは細菌がつきやすく、増殖もしやすいので、石けんや台所用洗剤で汚れを落としてから、煮沸または台所用漂白剤などで消毒殺菌し、日光に当ててよく乾かすことがたいせつである。
[正木英子]