[1] 〘自ハ四〙
① それにふさわしい様子である。似合っている。
※古今(905‐914)仮名序「文屋の康秀は、ことばはたくみにて、そのさま身におはず」
② (「名におう」の形で) 名前に適合する。その名にふさわしくする。
※古事記(712)下・歌謡「かくの如(ごと) 名に淤波(オハ)むと そらみつ 大和の国を 蜻蛉島(あきづしま)とふ」
※伊勢物語(10C前)九「名にしおはばいざ事とはむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」
[2] 〘他ワ五(ハ四)〙
① せなかに載せる。背負う。しょう。
※古事記(712)上「其の妻須世理毘売(すせりびめ)を負(おひ)て、〈略〉逃げ出でます時」
② 身に受ける。こうむる。引きうける。
(イ) 傷害を身に受ける。
※古事記(712)中・歌謡「いざ吾君(あぎ) 振熊(ふるくま)が 痛手淤波(オハ)ずは 鳰(にほ)鳥の 淡海(あふみ)の海に 潜(かづ)きせなわ」
(ロ) 恨み、報いなどを身に受ける。
※万葉(8C後)四・六四六「大夫(ますらを)の思ひ侘びつつ度(たび)まねく嘆き嘆きを負(おは)ぬものかも」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「恨みをおふつもりにやありけむ、いとあつしくなりゆき」
(ハ) 責任をひきかぶる。
※今昔(1120頃か)二九「此の事は荒三位と云て藤原の


と云ふ人ぞ、負
(おひ)ける」
③ 身にもつ。
(イ) 負債など、悪い状態を身にもつ。
※宇治拾遺(1221頃)一「ここに旅人来てやどらんとす。その人は、我金を千両をひたる人なり」
※現代経済を考える(1973)〈伊東光晴〉IV「こうしたハンディキャップを負う人たちが」
(ロ) 義務、責任をもつ。「責任を負う」
※火の柱(1904)〈木下尚江〉七「自己の職分と父の贖罪と二重の義務を負(オ)んでるのだから」
(ハ) (「…に負う」の形で) そのことに原因する。影響を受ける。おかげをこうむる。
※物理学と感覚(1917)〈寺田寅彦〉「吾人の時間に対する観念の源でも実は吾人の視覚に負ふ所が甚だ多い」
④ 後ろにする。背景にする。
※機動演習(1903)〈田口掬汀〉三「森を背後に負うた小山のやうな一構(ひとかまへ)」
⑤ 名をもつ。その名を名のる。
※古事記(712)上「亦其の神の御名は、汝負(おひ)て仕へ奉れ」