(読み)フ

デジタル大辞泉 「負」の意味・読み・例文・類語

ふ【負】[漢字項目]

[音](慣) ブ(呉) [訓]まける まかす おう おぶう
学習漢字]3年
物を背にのせる。「負荷負笈ふきゅう
めんどうな物事を背負い込む。身にこうむる。「負債負傷負担
後ろだてとする。頼みとする。「誇負自負抱負
敵に背を見せて逃げる。まける。「勝負しょうぶ
数学で、零より小さい数。「負号負数正負
[名のり]え・ひ・おい・ます
難読靫負ゆげい・ゆぎえ

ふ【負】

ある数が零より小さいこと。マイナス。⇔
イオン電極などの電荷がマイナスであること。陰。⇔
よくない物事・事柄。好ましくない状態。また、否定的・消極的であること。「の連鎖」「感情

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精選版 日本国語大辞典 「負」の意味・読み・例文・類語

まけ【負】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「まける(負)」の連用形名詞化 )
    1. 争いに負けること。競争に負けること。敗北。⇔勝ち
      1. [初出の実例]「今更にわらは遊びをしつるかなしるきまけとや人の見るらん」(出典:和泉式部続集(11C中)下)
    2. 値段を安くすること。値引きすること。また、そのかわりのもの。おまけ。
      1. [初出の実例]「五十両にはならぬかといへば、いやまけは御ざりませぬ」(出典:浮世草子・沖津白波(1702)四)
    3. 損をすること。また、その損失。
      1. [初出の実例]「めくりを打て、六七百まけて」(出典:洒落本・辰巳之園(1770))
    4. 手形交換所へ出した手形で、支払勘定の方が多いこと。
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 ( 名詞または動詞の連用形などに付いて ) その事柄において他人から圧倒されることを表わす。「気力負け」「根負け」「力負け」など。また、その事柄において度が過ぎるためにかえって本意を失うことを表わす。「名前負け」「位負け」など。
    1. [初出の実例]「女もあれ程に飾ると、飾りまけがして」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉五)

ふ【負】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制で官人の考課を決める場合の評価を低くする評定要素。罪を犯して贖銅一斤を支払うことを一負とし、十負を一殿(でん)とする。一殿ごとに成績が一等下される。
    1. [初出の実例]「私罪。計贖銅一斤一負」(出典令義解(718)考課)
  3. 数学で、ある数が0より小さいこと。マイナス。⇔。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
  4. イオン、電極などの電荷がマイナスであること。〔工学字彙(1886)〕
  5. 不利、暗い、陰気など、好ましくない状態。

おんぶ【負】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「おぶう(負)」の変化した語 ) 子供をせおうこと、または、せおわれることをいう幼児語
    1. [初出の実例]「坊はおとっさんにおんぶだから、能(いい)の」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)前)
  3. 他人にたよること。とくに、他人に金銭品物を負担させること。
    1. [初出の実例]「大名におんぶで渡るぬけ参り」(出典:雑俳・柳多留‐三八(1807))

おいおひ【負】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「おう(負)」の連用形の名詞化 )
  2. 背に物を載せること。負うこと。
  3. 傷などを身に受けること。「手負い
  4. 借金をすること。負債。
    1. [初出の実例]「大方は月をも愛でじ未進(みしん)せじ積れば人の負(ヲヒ)となるもの」(出典:仮名草子仁勢物語(1639‐40頃)下)

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普及版 字通 「負」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

(旧字)
9画

[字音]
[字訓] おう・たのむ・そむく・まける

[説文解字]

[字形] 会意
人+貝。貝を負う形。〔説文〕六下に「恃(たの)むなり。人の貝を守るに從ふ。恃むるなり」とする。また「一に曰く、貸を受けて償はず」とあり、負債の意。古い字形を見ないが、古い時代には貝は財宝の主たるものであるから、これを負担する形とみてよい。金文の図象に貝を綴って一朋とし、これを前後ふりわけにして荷う形のものがある。負恃の意はその引伸の義。勝負の意は、敗北することによって負荷を加える意とも解されるが、敗・背の声義の関係を考えることもできる。

[訓義]
1. おう、背におう、背に財貨をおう、になう、せにする。
2. こうむる、いだく、身につける。
3. たのむ、よる、おわせる、せめる、うける。
4. にもつ、おいめ。
5. そむく、たがう、うしなう。
6. まける、うしなう、うしろ。

[古辞書の訓]
名義抄 オフ・ソムク・トシ・タノム・ウレヘ・ハヂ・ハヅ・オホス・マク 〔字鏡集〕 トシ・タノム・ニナフ・ソムク・ハヂ・イタダク・カル・マク・オフ・オホス・ノゾム・ウレフ・チカラヲコシ

[声系]
〔説文〕に声としての一字を収める。はからすうり。〔礼記、月令(孟夏の月)〕の王がそれであるという。

[語系]
biuは背puk、北pkと声義近く、は背に負戴すること。背・北と声近く、にげる、そむくの意がある。また敗beatは貝、あるいは宝器の鼎をうって毀敗する意。敗北の意において通用する。

[熟語]
負痾・負・負倚・負違・負羽・負嫗・負下・負荷・負懐・負廓・負郭・負気・負貴・負・負義・負・負・負嵎・負屈・負・負剣・負暄・負言・負固・負鼓・負才・負債・負載・負材・負罪・負山・負恃・負・負疾・負質・負実・負手・負乗・負心・負薪・負芻・負贅・負石・負銭・負阻・負俎・負租・負俗・負他・負戴・負託・負諾・負担・負図・負弩・負徳・負任・負能・負背・負敗・負版・負犯・負畔・負販・負非・負逋・負姆・負冒・負謗・負畚・負約・負勇・負・負養・負耒・負累・負類・負穢
[下接語]
荷負・欺負・矜負・襁負・携負・譴負・孤負・辜負・債負・慚負・弐負・自負・勝負・担負・任負・背負・逋負・抱負・戮負

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【結負制】より

…朝鮮独特の土地面積表示法。起源は,人間の手で一握りの量の穀物を租税として負担すべき広さの土地を1把の土地とし,10把を1束,10束を1負,100負を1結としたことに始まると思われる。三国時代から1918年までの長い期間使用されたが,その内容は時代により異なる。…

※「負」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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