化学辞典 第2版 「フッ化塩素」の解説
フッ化塩素
フッカエンソ
chlorine fluoride
ClF,ClF3,ClF5が得られている.そのほか,ClF2+,ClF4-などのイオンも形成する.【Ⅰ】一フッ化一塩素(monochlorine monofluoride):ClF(54.45).約250 ℃ で塩素とフッ素を1:1に混合して反応させると得られる.無色の気体(液体は微黄色).密度1.67 g cm-3(-108 ℃,液体).F-Cl約1.628 Å.融点-155.6 ℃,沸点-100 ℃.フッ素より反応性が大きい.ガラス,さらに湿気があれば石英も侵す.H2,S,P,Si,Bなどの非金属および多くの金属と室温で反応する.多くの有機物に触れると炎をあげて燃える.水とはげしく反応し,HF,O2,O3 などを生成する.猛毒.[CAS 7790-89-8]【Ⅱ】三フッ化塩素(chlorine trifluoride):ClF3(92.45).約280 ℃ で塩素(またはClF)とフッ素とを反応させ,スチール容器で蒸留精製すると得られる.無色の気体(液体は黄緑色,固体は白色).Clを中心に,T字形に3個のFが結合している.Cl-F約1.698 Å(両側二方向),1.598 Å(中央1個).∠F-Cl-F約87°.融点-76.34 ℃,沸点11.75 ℃.特有臭がある.加熱すると
ClF3 ClF + F2
の解離が起こる.反応性が大きく,フッ素化,酸化作用をする.グラスウール,有機物は蒸気に触れるとはげしく燃える.水とはげしく反応する.湿気があると石英も侵す.フッ素化剤に用いられるほか,焼夷(い)弾,原子炉の燃料処理,ロケットの着火,推進剤,フルオロカーボンの熱分解防止剤などにも用いられる.眼,皮膚をおかし,有毒.[CAS 7790-91-2]【Ⅲ】五フッ化塩素(chlorine pentafluoride):ClF5(130.44).約350 ℃ の高圧下で,塩素と過剰のフッ素とを反応させるか,光照射下でClF3と F2 とを反応させると得られる.室温では無色の気体(固体も無色).正方すい型構造,底面中央にClがあり,すい形の5頂点にF原子が位置する.Cl-F約~1.92 Å(底面内),~1.62 Å(頂点).融点~-104 ℃,沸点-13.1 ℃.反応性が大きく,多くの金属,非金属と反応してフッ化物をつくる.水と反応してHFを生じる.有機合成のフッ素化剤に用いられる.[CAS 13637-63-3]【Ⅳ】各フッ化物は強いルイス塩基(たとえば,フッ化アルカリなど)では陰イオン(ClF2-,ClF4-)をつくり,強いルイス酸(たとえば,SbF5など)では陽イオン(ClF2+,ClF4+)をつくる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報