フッ化硫黄(読み)ふっかいおう(英語表記)sulfur fluoride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化硫黄」の意味・わかりやすい解説

フッ化硫黄
ふっかいおう
sulfur fluoride

硫黄フッ素化合物。次の6種が普通に知られている。

(1)六フッ化硫黄 高温で硫黄にフッ素を直接反応させると、主生成物六フッ化硫黄のほかに低級フッ化物(四フッ化物、五フッ化物)が生成するので、熱分解、アルカリ洗浄、蒸留などにより不純物を除いて六フッ化硫黄が得られる。無色無臭の気体。気体分子は硫黄原子を中心とする正八面体構造。熱的に安定で、化学的にも不活性。水に難溶。エタノールエチルアルコール)に溶ける。耐熱性、不燃性、非腐食性、電気的絶縁性がきわめて優れているため、気体絶縁材として変圧器、遮断器、粒子加速器などに用いられるほか、トレーサーガス、エッチング剤としても利用される。

(2)十フッ化二硫黄(五フッ化硫黄) 化学式S2F10、式量254.1。硫黄とフッ素との反応生成物から、分別蒸留によって六フッ化物から分離される。無色の揮発性液体。融点-52.7℃、沸点30℃、比重2.08。気体ではF5S-SF5の構造をもつ分子が存在する。熱すると六フッ化硫黄と四フッ化硫黄に分解する。有毒。

(3)四フッ化硫黄 化学式SF4、式量108.1。アセトニトリル中70~80℃で二塩化硫黄とフッ化ナトリウムを反応させて得られる無色の気体。融点-121℃、沸点-38℃、比重1.919(200K)、2.348(-188℃)。アルカリ性水溶液により加水分解する。反応性が高く、フッ素化剤となる。

(4)四フッ化二硫黄 化学式S2F4、式量140.1。二塩化硫黄SCl2とフッ化水銀(Ⅱ)HgF2とを加熱反応させて得られる。F3S-SFのような構造であることがわかっている。

(5)二フッ化硫黄 化学式SF2、式量70.1。一フッ化硫黄を熱して得られる無色の気体。きわめて不安定。

(6)二フッ化二硫黄(一フッ化硫黄) 化学式S2F2、式量102.1。フッ化銀に過剰の硫黄を加えて、真空中で熱して得られる無色の気体。ジフルオロジスルファンFSSFとチオチオニル二フッ化物SSF2とがある。FSSFは融点-133℃、沸点15℃、比重1.5(-100℃)。SSF2は融点-164.6℃、沸点-10.6℃。

[守永健一・中原勝儼]


フッ化硫黄(データノート)
ふっかいおうでーたのーと

フッ化硫黄
六フッ化硫黄
SF6
式量146.1
融点-50.5℃
沸点
比重液体,1.88(測定温度-50.8℃)
昇華温度-63.8℃
臨界温度54℃

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フッ化硫黄」の意味・わかりやすい解説

フッ化硫黄
フッかいおう
sulfur fluoride

一フッ化硫黄 S2F2 ,二フッ化硫黄 SF2 ,四フッ化硫黄 SF4 ,五フッ化硫黄 S2F10 ,六フッ化硫黄 SF6 の5種の化合物が知られており,S2F10 以外はすべて無色の気体。六フッ化硫黄が最も一般的で,フッ化水素ガスをニッケル製のパイプの中に入れ,そのガス中で加熱した硫黄と反応させてつくった無色無臭の気体。融点-50.8℃,比重 5.107 (空気=1) 。フロンガスよりも電気特性がすぐれ,高圧下で用いると絶縁オイルに近い絶縁耐力があり,耐熱性,耐腐食性に富んでいるので,電気絶縁用気体として一般に使用される。

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