フランク=コンドンの原理(読み)フランク=コンドンのげんり(英語表記)Franck-Condon's principle

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

フランク=コンドンの原理
フランク=コンドンのげんり
Franck-Condon's principle

分子内の2つの電子状態の間で遷移が起る場合,原子核の位置は変化しないという法則。図の曲線A,Bは,二原子分子の2つの電子状態におけるポテンシャルエネルギーを表わしたもので,横軸は2つの原子核の間の距離,縦軸はエネルギー,水平線は各振動状態のエネルギー準位を示す。 A の振動状態 a (曲線A上の任意の点) で光を吸収して上の B に遷移するとき,電子が遷移するのに要する時間は核の振動に比べて非常に速く,この間に核の位置は変化しないと考えられる。これがこの原理のおもな内容である。したがって,遷移後は,a の真上に端をもつ b' の振動状態 (これをフランク=コンドン状態という) に移る。しかし,この振動状態はすぐに基底状態 b に落ち,光を放出して真下の a' の振動状態に遷移する。このようにして,分子の吸収・発光スペクトルと分子内振動との関連が議論できる。この原理は J.フランクが提唱し,E.コンドンが量子論の立場から基礎づけたものであるが,原子核の質量が電子の質量に比べて無限に大きいとしたときに厳密に成立し,一般には近似であり,この原理からのずれも観測されている。

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化学辞典 第2版 の解説

フランク-コンドンの原理
フランクコンドンノゲンリ
Franck-Condon principle

多原子系中で起こる光子の吸収・放出を伴う遷移の際,その遷移の時間中は原子核の位置は変化しないとする原理.ボルン-オッペンハイマー近似に従い,多原子系の全体の波動関数を核の座標のみに関する波動関数 φn と,電子座標に関する波動関数(核の座標はパラメーターとして含む)φe との積で表せば,φe の異なる状態への遷移の時間に比べて核の運動は遅いので,核の座標の変化は無視できる.すなわち,核の座標(配位座標)に対して電子エネルギーを示したポテンシャル曲線間の光学的遷移は,垂直な線で示すことができる(図).光の吸収による励起後,核位置の安定化によって生じるエネルギー変化をフランク-コンドンエネルギーとよんでいる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 の解説

フランク‐コンドンの原理【Franck-Condon principle】

ある分子系内において,一つのエネルギー準位から他の準位への移動は非常に迅速に起こるので,その系内の原子核はすべて定常状態にあると見なせるという原理である.

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