ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フランジェ」の意味・わかりやすい解説
フランジェ
Franjieh, Suleiman
[没]1992.7.23. レバノン,ベイルート
レバノンの政治家。大統領(在任 1970~76)。有力なマロン派キリスト教一族の指導者で,1970年代半ばのレバノン内戦を招いた中心人物とみなされた。トリポリとベイルートで教育を受け,ベイルートで輸出入会社を経営。1957年,対立する一族数人の殺害事件に巻き込まれてシリアに逃亡,のちにシリア大統領となるハーフェズ・アル・アサドと親しくなった。ほどなく帰国し,兄ハミドの跡を継いで一族の指導者および国会議員となり,数々の閣僚職を歴任。1970年8月,大統領に選出されたが,やがてその専制的な統治と,息子トニーを始めとする無能で汚職にまみれた同族を登用したことにより,イスラム教徒とキリスト教徒をともに敵にまわすことになった。大統領退任直前の 1976年6月,イスラム教左派およびパレスチナ軍との戦争が拡大するなか,フランジェがアサドにマロン派キリスト教への援軍を要請したと伝えられたことから,シリアの介入に反対する敵対諸族はイスラエルと同盟した。1978年6月,敵対するキリスト教民兵組織,ファランヘ党の党員によってトニーが妻と娘ともども殺害されたことから,派閥間の亀裂が決定的となり,内戦の早期終結が遠のいた。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報