ブッケロ(その他表記)bucchero

改訂新版 世界大百科事典 「ブッケロ」の意味・わかりやすい解説

ブッケロ
bucchero

エトルスク陶器のうち黒色光沢を有する陶器の名称。南アメリカ産の芳香を有する陶土によって作られた陶器に対するスペイン名ブカロbúcaroに由来し,そのポルトガル製模造品がイタリアに普及しつつあった18世紀に,エトルリアの墓から同様の陶器が出土したために与えられた名称である。ブッケロの陶体内部は灰色もしくは黒色,表面は黒色光沢をし,その技法に関する説は幾つかある。陶土に炭化物の粉を混ぜたとする説,第2次焼成の際にいぶしたとする説,マンガン混入説などである。しかし,現在は,陶土に含まれる酸化鉄が還元炎で黒く変色した結果であるとみなされている。その起源に関しても渡来説があるが,青銅器時代からイタリア北部には黒色磨研土器があることと,エトルリアでは前7世紀中ごろから前6世紀まで製作が続けられたため,エトルリア起源とするのが大勢である。器形はギリシア陶器の影響が強く,アンフォラ,オイノコエ,キュリクス,カンタロスなど多様である。前7世紀後半,東方化様式の装飾モティーフが浮彫状に刻出されたブッケロが出現し,またブッケロ・ソッティーレ(薄いブッケロ)と呼ばれる薄手のものも作られた。南イタリア北アフリカからの出土は,エトルリア人との交易活動を証明している。主たる製作地タルクイニア,ブルチ,チェルベテリなどである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブッケロ」の意味・わかりやすい解説

ブッケロ
bucchero ware

前8世紀末~3世紀初め頃に製作されたエトルリアの陶器。黒の模様または精妙な表面の黒い輝き,青銅器類をまねた肉薄の器形およびレリーフ状の繊細な表面装飾や刻文が特徴。初期のものは,ろくろを使わず幾何学模様が多いが,前6世紀頃には鳥や動物図案が使われた。特に前 680~600年頃のものはブッケロ・ソッティーレと呼ばれ,ろくろと焼成の高度な技術で知られている。

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