ベルナノス(読み)べるなのす(英語表記)Georges Bernanos

デジタル大辞泉 「ベルナノス」の意味・読み・例文・類語

ベルナノス(Georges Bernanos)

[1888~1948]フランス小説家カトリックの立場から、人間の内なる聖性と悪魔性との激しい相克を描いた。作「悪魔の陽の下に」「田舎司祭の日記」など。

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精選版 日本国語大辞典 「ベルナノス」の意味・読み・例文・類語

ベルナノス

  1. ( Georges Bernanos ジョルジュ━ ) フランスの小説家。カトリック主義にたち、悪魔と聖性の戦いを主題とした。代表作「田舎司祭の日記」。(一八八八‐一九四八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルナノス」の意味・わかりやすい解説

ベルナノス
べるなのす
Georges Bernanos
(1888―1948)

フランスの小説家、思想家。パリに生まれ、カトリックの信仰のもとに育ち、近代社会に対する危機意識からモーラスに学び、早くから「アクシオン・フランセーズ」の闘士として活躍した。第一次世界大戦から復員したのち、1926年『悪魔の陽のもとに』を発表して文壇にデビュー。以後『よろこび』(1929)、『田舎(いなか)司祭の日記』(1936)、『新ムーシェット物語』(1937)、『ウィーヌ氏』(1943)などの作品によって、現代における信仰の欺瞞(ぎまん)を暴き、殺人さえおこる憎悪や罪の渦巻く世界での人間の聖性と悪魔性との激しい相克を描き続け、20世紀におけるドストエフスキーの正統な後継者の地位を占めた。彼にこのような小説を造型させた危機意識は、また彼をユニークな思想家たらしめた。そして1931年反ユダヤ主義者ドリュモンÉdouard Adolphe Drumont(1844―1917)の鎮魂歌『心正しきものの大いなる恐怖』によって近代社会そのものを告発し、スペイン市民戦争(スペイン内戦)が勃発(ぼっぱつ)するや『月下の大墓地』(1938)を著して、聖なる戦いの美名のもとに無辜(むこ)の民衆殺戮(さつりく)するファシストとそれを支援する教会を弾劾した。1938年祖国に絶望してブラジルに移住したあと、1940年にフランスがドイツに降伏するや、『イギリス人への手紙』(1942)などによりファシズムへの抵抗を祖国に訴え続け、ドゴール将軍と並んでレジスタンスの先駆者の栄誉を担った。第二次世界大戦後1945年に帰国するが、デモクラシーの勝利に酔う戦後社会のなかにあって、ひとり敢然と機械に支配される現代文明の未来に警告を発し、世界全体主義化の危険を説いた。戦後の作品としてはエッセイ集『自由、何をなすためか』(1953)、ドミニコ会士で作家のブリュックベルジェRaymond-Léopold Bruckberger(1907―1998)のシナリオにつけた対話『カルメル派修道女の対話』(1949)などがある。

渡辺一民

『渡辺一民編『ベルナノス著作集』全6巻(1976~1982・春秋社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ベルナノス」の意味・わかりやすい解説

ベルナノス
Georges Bernanos
生没年:1888-1948

フランスの作家。カトリック系の学校で中等教育を受け,一時聖職につくことを考えたあと,それを断念,アクシヨン・フランセーズに加入してその活動分子となり,ルーアンで王党派の週刊紙の主筆としてアランに対抗した。第1次世界大戦に従軍後,アルスの聖人ビアンネーをモデルとした小説,《悪魔の陽のもとに》(1926)で成功を収め,その後《欺瞞》(1927),《歓び》(1929。フェミナ賞),《田舎司祭の日記》(1936。アカデミー小説大賞),《新ムーシェット物語》(1937)などを発表,20世紀カトリック小説の代表的作家となる。1934から37年まではスペインのマリョルカ島に移住,《月下の大墓地》(1938)で,スペイン内乱におけるフランコ側の大虐殺に抗議した。38年,多年夢みていた南アメリカへの移住を決意,ブラジルに定住した。《ウイーヌ氏》(1943)を執筆する一方,第2次世界大戦中は,《われらフランス人》(1939),《イギリス人への手紙》(1942)などによって,抵抗運動の精神的支柱となった。45年,ド・ゴールの招請で帰国,《ロボットと戦うフランス》(1947)などで,現代の技術主義的文明を激しく攻撃した。晩年の2年間はチュニジアで過ごし,病を得て帰国直後に没した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベルナノス」の意味・わかりやすい解説

ベルナノス
Bernanos, Georges

[生]1888.2.20. パリ
[没]1948.7.5. ヌイイシュルセーヌ
フランスの小説家。コレージュ・ド・ブールジュなどカトリック系の学校を出て,パリ大学で法律を学ぶ。モーラスらの「アクシオン・フランセーズ」の運動に共鳴,しばらくルーアンで王党派週刊紙『ノルマンディーの前衛』を編集。第1次世界大戦後保険会社に勤めるかたわら,聖性を追求した小説『悪魔の太陽のもとに』 Sous le soleil de Satan (1926) を書き文筆生活に入った。『詐欺』L'Imposture (27) のあと,マヨルカ島パルマで『ある罪』 Un crime (35) ,『田舎司祭の日記』 Journal d'un curé de campagne (36) を執筆。帰国後の 1938年『月下の大墓地』 Les Grands Cimetières sous la luneを書いて,フランコ政権とスペイン教会を批判,同年ブラジルへ移住。ナチスとブルジョアを攻撃する多数のパンフレットや小説『ウィーヌ氏』 Monsieur Ouine (43) を発表。 45年帰国したが,第2次世界大戦後のフランスに幻滅して,死の直前までチュニジアに住んだ。ドイツの女流作家ル・フォールの『断頭台の最後の女』を翻案したシナリオ『カルメル会修道女の対話』 Dialogues des Carmélites (49) がある。

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百科事典マイペディア 「ベルナノス」の意味・わかりやすい解説

ベルナノス

フランスの作家。1926年《悪魔の陽のもとに》で文壇に出た。現代人の悪を描きながら人間における聖なるものを追求したカトリック作家。代表作は《田舎司祭の日記》(1936年)。スペイン内乱に際してのフランコ側の大虐殺を非難した《月下の大墓地》以後評論を多く書き,抵抗運動に精神的支柱を与えた。
→関連項目プーランクブレッソン

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世界大百科事典(旧版)内のベルナノスの言及

【反ファシズム】より

…日本の《土曜日》の名称はこれにならった)以下おびただしい数の週刊誌が,主としてフランスで作家や知識人の手で創刊されだすのも,この時期にほかならない。このほか,従来右翼作家とみなされてきたモーリヤック,ベルナノスらがスペイン内乱の現実を目にして反ファシズムの陣営に加わったことも記しておこう。とはいえ,36年末刊行のジッドの《ソビエト旅行記》,そのころからしだいに西欧に広がりだしたソ連の粛清裁判への疑惑,さらに37年5月のスペイン共和政府内における共産党によるアナーキスト,トロツキストの粛清といった一連の事実が,共和政府側に不利に展開しだした戦局とともに,反ファシズム戦線に亀裂を生じさせていったことは否定できない。…

※「ベルナノス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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