日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラセンタ療法」の意味・わかりやすい解説
プラセンタ療法
ぷらせんたりょうほう
プラセンタplacentaとは胎盤のことで、ヒトやブタ、ウマ、ヒツジなど動物の胎盤からさまざまな有効成分(プラセンタエキス)を抽出し、肝疾患などの病気の治療や健康の維持・増進、美容やアンチエイジングなどを目的として用いる療法。副作用や感染症の危険性はきわめて少ないとされるが、肥満傾向を示すこともある。プラセンタ注射(筋肉注射、皮下注射)のほか、内服、点滴などの方法があり、筋肉注射や皮下注射および点滴は吸収が穏やかで効果も持続する。
胎盤はそもそも、胎児の発育を支えるために酸素や栄養素を供給するとともに、胎児の各種臓器のかわりに消化や排泄(はいせつ)および呼吸を代行する役割を果たしており、この胎盤のもつ薬理作用が改めて注目されている。具体的には、肝臓の働きを強め、妊婦の乳汁分泌を促進し、花粉症などのアレルギー反応を抑制する作用などがある。また、免疫力を高めたり、活性酸素除去により老化を防止したり、美肌効果を高めたり、疲労を回復させたりするなどの作用ももっている。胎盤に含まれるタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル(無機質)の5大栄養素や、そのほか多くの栄養素のうち、各種成長因子が細胞分裂を活性化させる。また、肝細胞成長因子は肝臓その他の臓器を再生させ、繊維芽細胞成長因子は、肌の弾力を保持し潤いを与えて老化を防ぐように働く。そのため、これら成長因子は、再生医療やアンチエイジングの分野での活用が期待されている。
プラセンタ療法は2015年(平成27)時点で、肝炎や肝硬変などの肝疾患、更年期障害、乳汁分泌不全の各治療を目的とする使用について保険適用となっている。なお、肝機能障害の治療には胎盤加水分解物(商品名「ラエンネック」)が、更年期障害や乳汁分泌不全の治療には「メルスモン(商品名)」が皮下注射もしくは筋肉注射されるが、これらにはヒトから抽出したプラセンタが用いられる。
[編集部]