交尾により母体内で受精し、孵化(ふか)した胎仔(たいし)が子宮内で母体からなんらかの形で栄養などの供給を受け、十分に発育した子供を産み出す魚類。母体からの栄養の供給がなく、発育の初期段階の子供を産む魚類は卵胎生魚ovoviviparous fishとよぶ。胎生魚と卵胎生魚の間には移行段階にあるものが認められ、明瞭(めいりょう)に区別をすることが困難な種もいる。胎生魚は軟骨魚類では多くの種類にみられ、栄養物質の起源によって2型に分かれる。
〔1〕卵黄依存型胎生 卵黄依存型胎生では母体からは酸素などの供給を受けるが、栄養物質はほとんど卵黄である。この型はツノザメ類、ドチザメ類、ノコギリザメ類、カスザメ類などにみられる。
〔2〕母体依存型胎生 母体依存型胎生では最初は自分の卵黄で成長し、卵黄がなくなると母体から栄養の補給を受ける。この型はさらに3タイプに分かれる。
(1)食卵型 胎仔は自分で卵黄を食べて成長する。この胎仔は母親の子宮に入ってくる無精卵(受精していない卵)も食べるために、りっぱな歯をもっている。このタイプはネズミザメ、ホホジロザメ、アオザメ、オナガザメ、オオテングザメ、チヒロザメなどにみられる。オオワニザメ科のシロワニは無精卵以外に、子宮内の同腹の子供も食べてしまい、最強の1個体だけが生まれてくる。
(2)子宮ミルク型 母親の子宮壁から分泌される脂質栄養物(子宮ミルク)を特殊な器官や皮膚から吸収したり、直接飲み込んだりして成長する。このタイプはおもにアカエイ、イトマキエイ類、トビエイ類などのエイ類にみられる。
(3)胎盤型 卵黄を使いきると、一時的に子宮ミルクを飲み、胎盤の形成を待つ。胎仔には胎盤からへその緒を通して栄養物質が供給される。このタイプはメジロザメ類、シュモクザメ類、シロザメなどにみられる。これらのタイプの中間型や複合型など、さまざまなバリエーションが知られている。
硬骨魚類では胎生魚は限られており、軟骨魚類ほど多くない。淡水魚ではカダヤシ類、ヨツメウオ類、グーデア科Goodeidae、東南アジアからインドにかけて生息する淡水サヨリ類、海水魚ではウミタナゴ類、ゲンゲ科のナガガジ、イタチウオ科のイタチウオ、アシロ類、ラティメリア(シーラカンス)などが胎生である。ヨツメウオ科やグーデア亜科のなかに、鰓(えら)胎盤branchial placentaや胎盤状の花冠状組織trophotaeniaeなどの特殊な器官が発達し、そこから栄養を補給する種もいる。ウミタナゴ類では胎仔の背びれ、臀(しり)びれ、尾びれなどのひれ膜が突出し、ここに発達する毛細血管で酸素や栄養を吸収する。ゲンゲ科のナガガジの胎仔は口で母体からの栄養をとる。なお、メバルやアヤメカサゴなどは卵胎生魚である。
[尼岡邦夫]
…一方,卵巣腔中にいる胚の方も発生の一時期にひじょうに大きなひれを発達させ,この表面から栄養を吸収しているらしい。シーラカンスも胎生魚である。子を口に含んで育てるマウスブリーダーのような魚や,背中の皮膚に凹所をつくり,そこで卵を孵化させるコモリガエルなども特殊な形式に分化した広義の胎生の一種であるといえよう。…
※「胎生魚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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