日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレンツドルフ」の意味・わかりやすい解説
プレンツドルフ
ぷれんつどるふ
Ulrich Plenzdorf
(1934―2007)
ドイツの小説家、シナリオ作家。ライプツィヒ大学で哲学を学び、DEFA(映画会社)道具方(1955~1958)、兵役(1958~1959)を経て、映画大学(1959~1963)に学び、1963年来DEFAのシナリオを書く。1972年、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』のパロディー的戯曲『若きWのあらたな悩み』が東西ドイツで上演され、好評を博し、1972年から1973年にかけて公開の賛否の討論を引き起こした。また1973年にはその小説版、さらにシナリオ化(映画にはならず)を完成し、1974年にはそのラジオドラマが西ドイツで放送された。1973年大ヒットした映画のシナリオ『パウルとパウラの伝説』、1979年その第二部の小説『終わりなき幸福の伝説』が出版される。1973年東ドイツ芸術アカデミーよりハインリヒ・マン賞を受賞。彼が1974年に、クラウス・シュレジンガーKlaus Schlesinger(1937―2001)、マルティン・シュターデMartin Stade(1931―2018)とともに企画したアンソロジー『ベルリン物語集』は、当時の東ドイツ政権党であったドイツ社会主義統一党および国家公安省に妨害され、1976年出版断念となった。同年11月中旬、ウォルフ・ビーアマンの市民権剥奪(はくだつ)に反対する文書・署名者の最初の12人の一人となった。1975年以降は、ギュンター・デ・ブルユンGünter de Bruyn(1926―2020)、シュターデ、チンギス・アイトマートフなどの作品をシナリオ化している。1978年『下にも遠くにも』によりインゲボルク・バッハマン賞受賞。1980年には短編小説『おやすみなさいの物語』を、1997年『人気者プレンツィアウアーベルク』、1999年『一足す一は二にあらず』を発表した。
[酒井 府]
『早崎守俊訳『若きWのあらたな悩み』(1984・白水社)』