アンソロジー(読み)あんそろじー(英語表記)anthology

翻訳|anthology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンソロジー」の意味・わかりやすい解説

アンソロジー
anthology

詞華集語源ギリシア語 anthos (花) +legein (摘む) で,花束の意。本来はエレゲイア形式のエピグラム集をさし,前 90年頃ガダラのメレアグロスが,最初期から当代までの詩人 50人の作品の選集を編んだ。これを基礎として同類のものが次々に企画されたのち,コンスタンチヌス7世の治世 (913~959) にコンスタンチヌス・ケファラスがそれまでの詩選の再編集を試みた。いわゆる『ギリシア詞華集』 (980頃) は,それの改訂増補版ともいうべきもので,前7世紀から 10世紀にわたり 300をこえる詩人の作品を収めている。 1301年プラヌデスによってさらに改訂が加えられ,これが西ヨーロッパ諸国に伝えられて,大きな影響を与えることになった。近世以後アンソロジー編纂は盛んに行われ,現代では大小さまざまな選集が,時代別,種類別,主題別に,また総合的なものから個人作家のものまで,おびただしく刊行されている。特にイギリスには,エリザベス朝の詩的開花の基盤となった『トトル詩選集』 (1557) ,ロマン派源泉の一つとなった T.パーシーの『イギリス古詩拾遺』 (1765) ,アンソロジーの古典といわれるポールグレーブの『ゴールデン・トレジャリー』 (1861) などがある。日本には『万葉集』をはじめ『古今和歌集以下の 21代勅撰和歌集私家集などの豊かな伝統があり,中国にも『詩経』『文選』などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンソロジー」の意味・わかりやすい解説

アンソロジー
あんそろじー
anthology

詞華集、名詩選。ギリシア語のアンソロギアanthologia(花を集めたもの)に由来する。優れた詩や散文を集めたもので、最初の編者は紀元前1世紀のメレアグロスとされ、詩人50人のエピグラムepigram(短い風刺詩)を集めた。アンソロジーの名は2世紀の編者ディオゲニアヌスによって用いられた。こうして前7世紀から後10世紀に至る300人の詩人による6000の短詩が10世紀のケファラスによって完成され、アンソロジーというと、この『ギリシア詞華集』のことをさすようになった。近世のアンソロジーは叙情詩を中心とした短詩からなり、イギリスには『トテル拾遺選』Tottel's Miscellany(1557)、フランスでは『現代詩選』Le Parnasse contemporain(1866)があり、また、中国の『唐詩選』も含められよう。アンソロジーはジャンル別、時代別など種々あるが、内容は編者の鑑識眼や好みによって左右されることが多い。

[船戸英夫]

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