プロセニアム・アーチ(読み)ぷろせにあむあーち(英語表記)proscenium arch

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロセニアム・アーチ」の意味・わかりやすい解説

プロセニアム・アーチ
ぷろせにあむあーち
proscenium arch

劇場用語。舞台と観客席を隔てる額縁状の構築で、17世紀初頭、G・B・アレオッティの設計したパルマ宮廷劇場ファルネーゼ座に設けられたのが最初である。しかし仮設のものは、これに50年ほど先だって、やはりイタリアの宮廷劇場において用いられている。プロセニアム呼称は、当時のイタリアで古代ギリシアの用例に倣って、舞台をプロスケネ(古代ギリシア劇における楽屋スケネの前方の意)とよんだことに由来する。

 プロセニアム・アーチによって観客席と切り離された舞台空間は、精緻(せいち)な照明や装置による特殊な空間の創出が容易で、その追求は室内をリアリスティックに再現する19世紀の写実主義演劇上演頂点に達した。しかし20世紀初頭以降、演劇の原初的な感動を取り戻そうとする立場から、この撤廃が強く主張され、その結果、相変わらず観客席と舞台が相対しつつも、プロセニアム・アーチが両者を強くくぎることのない劇場が多くなっている。

横山 正]

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