改訂新版 世界大百科事典 の解説
ヘラクレスオオカブトムシ
Dynastes hercules
甲虫目コガネムシ科の昆虫で,世界最大のカブトムシとして知られる。ヘルクレスオオカブトムシともいう。学名はギリシア伝説の英雄ヘラクレスからつけられた。雄の大型個体には胸部の長い角を含めると180mmに達するものがある。雄は頭胸部が黒色,上翅が黄褐色で茶褐色の斑点を散在する。雌は角を欠き,胸部に褐色の短毛を密生し,上翅は点刻でしわ状となる。体長60mm内外。北アメリカ南部から南アメリカ北部までの大陸と西インド諸島に分布する。大型の個体と小型の個体とでは角の発達に相違が見られる。また大陸産のものと島嶼(とうしよ)産のものとでは,角の形や上翅の色彩が若干異なる。夜行性で樹液や発酵果実に飛来する。幼虫は朽木や腐植土の中で育つ。オオカブトムシ属Dynastesは6種記録されているが,いずれもアメリカ大陸に分布する。南アメリカの大陸側にのみ分布するネプチュンオオカブトムシD.neptunusは全体が黒いが,ヘラクレスオオカブトムシとともに大型の種類として知られる。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報