ベルの不等式(読み)ベルのふとうしき(英語表記)Bell's inequality

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベルの不等式」の意味・わかりやすい解説

ベルの不等式
ベルのふとうしき
Bell's inequality

1964年にイギリスの物理学者ジョン・スチュアートベルが提唱した,複数の物理量の観測値に関する不等式。離れている複数の粒子性質は個別に決定できる(局所実在性が成り立つ)と仮定すると成立するが,量子力学エンタングルメントと呼ばれる性質が正しいとすれば成立しない。式にはさまざまな形式がありうるが,いずれも 1ヵ所で発生した二つの光子偏光の向き,あるいは 1ヵ所から反対方向に飛び出した二つの電子スピンに関する不等式である。アルバートアインシュタインらは EPRパラドックスを発表し,局所実在性を仮定すると量子力学は不完全だと主張したが,ベルの不等式によって,局所実在性そのものの正否を実験で検証できるようになった。1970年代にジョン・クラウザーらが最初に実験を行ない,それとは独立にマイケル・ホーンらも実験を行なったが,ともに結果は曖昧だった。決定的な実験結果とされるのが,1982年に発表されたフランスのアラン・アスペによるもので,ベルの不等式は成立せず,奇妙にみえるエンタングルメントという性質が真実であることが立証された。つまり量子力学に矛盾はなく,アインシュタインらの非難はあたらないということが示された。

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