日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベローフ」の意味・わかりやすい解説
ベローフ
べろーふ
Василий Иванович Белов/Vasiliy Ivanovich Belov
(1932―2012)
ソ連・ロシアの小説家。コルホーズの工場労働者を経たのちゴーリキー文学大学を卒業。詩人として出発し、『ぼくの森の村』(1961)などの詩集がある。その後小説に転じ、『酷暑の夏』(1963)などの短編集で一部の批評家からその優れた叙情性を高く評価され、ソ連の農村の現実を鋭くえぐりだした『あたり前のできごと』(1966)や『大工物語』(1968)で作家の地位を確立した。前者は、過酷な労働を強いられ一家離散に追い込まれたコルホーズ農民の悲劇を描いたもので、平凡な農民の生活を通し、否定的側面をも含めソ連の農村の実態を白日のもとにさらしたこの作品は、農村文学の白眉(はくび)とされる。このほか代表作に、農業集団化の混乱期を扱った長編『前夜』(1976)や、農村の風習を民俗学的な観点からルポルタージュした『調和』(1979~1981)がある。また、1920年代末の富農撲滅と農業の集団化運動をテーマとした大河小説『大激変の年』第3部が、1994年の初めに完結をみた。
[浦 雅春 2016年1月19日]