ホフマン転位(読み)ほふまんてんい(その他表記)Hofmann rearrangement

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホフマン転位」の意味・わかりやすい解説

ホフマン転位
ほふまんてんい
Hofmann rearrangement

カルボン酸アミドに次亜塩素酸ナトリウム、またはハロゲンアルカリを作用させると、カルボニルの脱離した第一アミンが生ずる反応をいう。ホフマン反応ともよばれる。

  RCONH2+NaClO―→RNH2
 1882年ドイツのA・W・ホフマンによりみいだされた。この反応はまずN-クロロアミドを生じ、これがアルカリで脱塩酸されるとともにカルボン酸のアルキル基またはアリール基窒素転位イソシアナートイソシアン酸エステル)となる段階が特徴的である。ここで生成したイソシアナートは溶媒のアルコールと反応してウレタンになり、さらに加水分解するとアミンが得られる。


 同じホフマンが発見したホフマン分解は、「ホフマンの徹底メチル化」ともよばれていて、アミンの炭素‐窒素間結合を開裂させる反応である。ホフマン転位とはまったく別の反応であるので混同を避けねばならない。

[湯川泰秀・廣田 穰 2016年2月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ホフマン転位」の解説

ホフマン転位
ホフマンテンイ
Hofmann rearrangement

カルボン酸アミドに次亜ハロゲン酸アルカリ水溶液(ハロゲンとアルカリ水溶液)を加えて温めると,炭素原子が1個少ない第一級アミンを生じる反応.

  RCONH2 + Br2 + 4KOH

→ RNH2 + 2KBr + K2CO3 + 2H2O  

途中で炭化水素基Rが炭素原子から窒素原子に転位(分子内転位)してイソシアン酸エステルを生じ,これが中間体となる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のホフマン転位の言及

【アミン】より

…アンモニアNH3の水素原子を炭化水素基Rで置換した化合物の総称。炭化水素基の数が1個,2個,3個のものをそれぞれ第一アミン,第二アミン,第三アミンという(図1)。なお,アンモニウム塩NH4Xの4個の水素原子をすべて炭化水素基で置換した化合物(一般式R4NX)は第四アンモニウム化合物と呼ばれる。アミンの炭化水素基が脂肪族のものだけであれば脂肪族アミン,一つでも芳香族のものを含めば芳香族アミンという。構造の簡単なアミンは,窒素原子に結合している炭化水素基名の後に接尾語amine(アミン)をつけて命名する(表参照)が,芳香族第一アミンの基本的なものについては,慣用名(アニリントルイジンなど)が認められている。…

※「ホフマン転位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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