改訂新版 世界大百科事典 「ホモトピー」の意味・わかりやすい解説
ホモトピー
homotopy
位相空間Xから位相空間Yへの二つの連続写像f,f′:X→Yに対し,Xと閉区間[0,1]の直積X×[0,1]からYへの連続写像F:X×[0,1]→Yであって,Xのどの点xについてもF(x,0)=f(x),F(x,1)=f′(x)となるものがとれるとき,fとf′は同じホモトピー類に属する,またはfとf′はホモトープであるという(図)。ft:X→Y(0≦t≦1)をft(x)=F(x,t)で定義すれば,各ftは連続写像で,{ft}はtに関して連続的に変わる。したがってfとf′が同じホモトピー類に属するとはfからf′に連続的に変形できることを意味している。二つの位相空間X,Yに対し,連続写像f:X→Yと連続写像g:Y→Xをとって,合成g◦f:X→X,f◦g:Y→YがそれぞれX,Y上の恒等写像と同じホモトピー類にあるようにできるとき,XとYは同じホモトピー型であるという。同相な位相空間は同じホモトピー型であるが,同相でなくとも同じホモトピー型となることがある。例えば,線分,円板,球体は1点と同じホモトピー型をもち,円柱,メービウスの帯,中心を除いた円板は円周と同じホモトピー型をもつ。ホモトピー類やホモトピー型の研究は位相幾何学の重要な分野で,1920年ころよりその研究が始まったが,50年以後にめざましく進展し,また多様体の問題などに応用されて多くの問題が解かれた。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報