日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホモロジー」の意味・わかりやすい解説
ホモロジー
ほもろじー
homology
ホモロジーは、ホモトピー理論と並んで、組合せおよび代数的トポロジーにおける基本概念である。
多面体
n次元空間Rnにあるr+1個の点v0,v1,……,vrが一般の位置にあるとは、どのs個(s≦r)の点もs-一次元部分空間上にないことである。これらの点v0,v1,……,vrを含む最小の凸集合をr‐単体という。
一点v0は0単体、線分|v0v1|は1単体、三角形|v0v1v2|は2単体、四面体|v0v1v2v3|は3単体である(頂点とよぶ。
)。一般のr‐単体は|v0v1……vr|で示される。ここでv0,v1,……,vrをそのσr=|v0v1……vr|のとき、そのs+1個の頂点で定まるs‐単体σsをσrの辺単体という。また、次の二つの条件を満たす単体の集合Kを複体という。
(1)σ∈Kならばσの辺単体はすべてKに属す。
(2)σ,σ′∈Kならば、σ⊃σ′はσおよびσ′の共通の辺単体である。
Kに属す単体の最大次元をそのKの次元という。Kの単体の和集合を多面体といい|K|で示す。
Rnの部分集合Xは、|K|=Xとなるような複体Kが存在するとき、三角形分割されるという。
[野口 廣]
ホモロジー群
複体Kが与えられているとする。Kの各単体σr=|v0v1……vr|にその向きを考える。向きは頂点の順列であり、偶置換で移れる向きは同じとし、そうでない向きは異なる向きとしてマイナスをつけて区別する。向きをつけた単体は、その順列の順に頂点を並べてσr=<v0v1……vr>と示す。以下単体は向きをつけられているものとする。これらr‐単体の整数を係数とした和
をr‐鎖という。r‐鎖の集合はr‐単体を基とする自由加群Cr(K)をつくる。各r‐単体σrにその境界
を定める。ここで<v0……i……vr>はviを除くことを示す。この境界∂rσrはr-1鎖であり、この対応を線形に拡大して準同形写像
∂r:Cr(K)→Cr-1(K)
を得る。∂r-1゜∂r=0であることが示されるので、
∂r+1(Cr+1(K))⊂Ker∂r
よって剰余加群
Hr(K)=Ker∂r/∂r+1(Cr+1(K))
が定まり、これをKのr次元ホモロジー群という。Hr(K)は、位相空間Xの三角形分割によらずに一定するので、これをHr(X)で示し、Xのr次元ホモロジー群という。
はいろいろな位相空間のホモロジー群を示したものである。
[野口 廣]
ベッチ数・オイラー数
多面体Xのr次元ホモロジー群Hr(X)は有限生成な可換群であり、可換群の基本定理により定まるその階数をXのr次元ベッチ数といい、prで示すことにする。そしてこれらの次のような和
χ(X)=p0-p1+p2-……+(-1)npn
を多面体Xのオイラー数という。 は、それぞれの多面体のベッチ数とオイラー数を示したものである。
多面体Xの任意の三角形分割をKとし、Kのr‐単体の個数をαrで示すと、次のオイラー‐ポアンカレの公式が成り立つ。
Σ(-1)rαr=Σ(-1)rpr=
χ(X):オイラー数
とくにXが球面であると、p0=p2=1,p1=0であるから
α0 - α1 + α2
(頂点の数)(辺の数)(面の数)
=p0-p1+p2=2
となり、これがオイラーの多面体公式である。
[野口 廣]
コホモロジー群
複体Kのr‐鎖群をCr(K)とする。ただし係数は実数とする。このとき、Cr(K)は実数を係数とする線形空間となる。その双対空間をCr(K)とする。
任意の∈Cr(K)とC∈Cr+1(K)に対して
∂*()(C)=(∂C)
によりコホモロジー境界準同型写像
∂*r-1:Cr-1(K)→Cr(K)
を定めると、ホモロジー群の場合と同様に
∂*r゜∂*r-1=0
であり、剰余群
Hr(K)=Ker∂*r/∂*r-1(Cr-1(K))が定まり、これが空間X=|K|のr次元コホモロジー群で、ホモトピーの研究に用いられる。
[野口 廣]