ホラシノブ(その他表記)Sphenomeris chinensis (L.) Maxon

改訂新版 世界大百科事典 「ホラシノブ」の意味・わかりやすい解説

ホラシノブ
Sphenomeris chinensis (L.) Maxon

暖地の日向または半日陰の路傍や山ろくなどにごくふつうにみられるホングウシダ科の常緑シダ。根茎は短くはい,褐色光沢のある鱗片がつく。葉は叢生(そうせい)し,大きなものでは葉柄を含めて1mに達する。黄緑色か,時には紅紫色が加わることがある。葉面は卵状長楕円形,3~4回羽状に分裂し,裂片はくさび形となり,葉質はやや厚い。脈端に胞子囊がつき,隣のものと融合したようにみえることもある。包膜の先端は葉縁に近づく。関東以西の暖地から,中国中南部,台湾,さらに熱帯アジアに広く分布し,マダガスカルポリネシアにも生育している。中国では解毒作用があるとして蚱参(ぼうさくさん)という名の民間薬となる。潮風を直接受ける海岸の岩壁などにはハマホラシノブS.biflora (Kaulf.) Tagawaがあるが,この種は葉質が厚くなるという海浜植物の特徴をもつ。本州南端から,四国,九州,琉球,台湾,中国南部,フィリピンなどで知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホラシノブ」の意味・わかりやすい解説

ホラシノブ
ほらしのぶ / 洞忍
[学] Sphenomeris chusana (L.) Copel.

イノモトソウ科の常緑性シダ。短くはう根茎から、3~4回羽状に細かく切れ込んだ長さ1メートルに達する葉を束生する。葉身は長めの卵状で長さ60センチメートル、幅20センチメートルになり、やや厚く堅い草質。裂片はくさび形で、脈端に胞子嚢(のう)群をつける。暖地に多く、日当りのよい乾燥地に群生する。太平洋岸には、葉身が三角形で葉質の厚いハマホラシノブS. bifloraがあり、常緑性で中国から熱帯アジアに広く分布する。

[西田治文]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホラシノブ」の意味・わかりやすい解説

ホラシノブ(洞忍)
ホラシノブ
Sphenomeris chinensis

ワラビ科の常緑性シダ植物。アジア東・南部の暖・熱帯および,マダガスカルやポリネシアにまで広く分布する。日当りのよい乾燥地に群生し,ごく普通にみられる。根茎は短く匍匐し,褐色で光沢のある鱗片をつける。葉は長さ 40~70cmで,葉身は3~4回羽状に細かく裂け,黄緑色で冬には紅紫色を帯びる。裂片は狭い楔形で厚い革質。胞子嚢群は裂片の脈端につき,包膜は胞子嚢群の両側下部で葉につき,つぶれたコップ状になる。胞子は両面体型。

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