デジタル大辞泉 「ボレロ」の意味・読み・例文・類語
ボレロ(〈スペイン〉bolero)
2 前が開いた、ウエストまでの短い上着。
[補説]作品名別項。→ボレロ
翻訳|bolero
スペインの舞曲で,18世紀の末ころにセギディーリャの一型として創り出された。スペイン語ではボレーロと発音される。創始者ないし初期の名手として,舞踊手セバスティアン・セレーソSebastián Cerezoおよびアントン・ボリーチェAntón Bolicheの名が記憶されている。従来のセギディーリャよりいちだんと優美な踊りで,形式名に関しては諸説あるが,軽やかな身のこなしから〈volar〉(飛ぶ)という言葉に関連があるとする説が強い。19世紀初頭からスペイン舞踊の最もたいせつな演目として,スペイン本国のみならずヨーロッパ諸国にも知られた。たとえばショパンも1833年に1曲のボレロを作曲している。ボレロは3拍子であるが,ポーランドのポロネーズに似て符割りが細かく,浮き立つような楽しさがある。その後もこの独特なリズムを用いて作曲を試みた人は少なくないが,最も名高いのは,1928年にラベルがバレエ音楽として書いた1編である。スペインでは各地方の町村に民俗舞曲化したボレロも聴かれる。
なおキューバで19世紀の末から抒情的な歌曲として発達したボレロは,名前こそ同じでもリズムの実体が異なり,2拍子または4拍子である。このキューバ起源のボレロはメキシコほかラテン・アメリカ諸国に広まり,大衆的でリズミカルな歌謡の一典型として好まれ数々の名曲を生んだ。トリオ・ロス・パンチョスの持歌もほとんどがボレロのリズムによっている。
執筆者:浜田 滋郎
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スペインやキューバにみられる舞踊。スペインのボレロは3/4拍子の三部分形式で、特有のリズムをもつ。1780年ごろ、舞踊家セバスチャン・セレゾによって創始されたと伝えられている。1人あるいは2人1組で踊るが、2人1組の場合は、中間部分において交替でソロを踊る。踊り手は歌いながら(多くは母音唱法)、カスタネットやタンバリンなどを奏する。ボレロを芸術音楽に取り入れた例としては、フランスの作曲家ラベルの管弦楽曲『ボレロ』(1928)が有名である。スペインのボレロはヨーロッパ大陸や植民地時代のアメリカ大陸にも広まったが、ラテンアメリカではキューバのボレロのほうが優勢であった。スペインのボレロよりもハバネラなどと深いかかわりをもつキューバのボレロは、2/4拍子、二部形式の歌と舞踊で、ボンゴ、コンガ、クラベスを伴奏に用いる。
[由比邦子]
腰丈またはそれより短い丈の、前を開けたまま着る上衣のこと。スペインの舞踊の名に由来する。本来スペインの男子の丈の短い上着で、白いシャツと明るい色合いのサッシュの上に組み合わせて着る。1860年代から、主として婦人服、子供服に応用されている。以来、袖(そで)や襟付きのものもあるが、袖なし、襟なしのものもある。前の打合せは付合せ仕立てで、羽織るようにして着る。1950年ごろのサマー・ドレスや、70年なかばより流行したベアトップ・ドレスやホルター・ドレスなど、背中が露出するドレスと組み合わせたり、スカートとのアンサンブルとして着用することが多い。
[田村芳子]
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…舞曲と舞踏のリズムへの強い関心は,オリジナルのバレエ曲をむろん彼に書かせた。《ダフニスとクロエ》(1912),《ラ・バルス(ワルツ)》(1920),《ボレロ》(1928)など。これらの曲には,歌曲集《シェエラザード》や管弦楽組曲《スペイン狂詩曲》(1908)に彼が駆使した明確・華麗で創意豊かな管弦楽法の,いっそう洗練された名人芸を,聴くことができる。…
…新・旧カスティリャ,レオン,エストレマドゥラ,ムルシアの各地方にも,古い伝統に立つ美しい民謡や舞曲は少なくない。とくにラ・マンチャのセギディーリャはスペイン舞曲の典型として,マドリードに発生したボレロやアンダルシアのセビリャーナスsevillanasを生む母体ともなった重要なものである。そして,こんにちスペインの民俗芸能を代表するものとなったアンダルシアのフラメンコがある。…
…スペインは,舞踊のさかんなことにかけてはヨーロッパでも指折りの国である。ボレロ,セギディーリャ,ホタ,ファンダンゴ,各種フラメンコ舞踊など世界的に知られる踊りも少なくない。なかでも著名なのはフラメンコだが,これがスペイン舞踊のすべてであるように思うのは誤解で,この国にはより古い歴史をもつ古典舞踊や,それぞれ固有の風土を背景とした多様な民俗舞踊の流れも存在する。…
※「ボレロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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