日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボロジノの戦い」の意味・わかりやすい解説
ボロジノの戦い
ぼろじののたたかい
1812年9月7日(露暦8月26日)モスクワの西方124キロメートルのボロジノБородино/Borodino村で行われたロシア軍とナポレオン軍との戦闘。ロシア軍は兵力13万2000、砲624門を有し、これに対してフランス軍は兵力13万5000、砲587門と、両者の勢力はほぼ拮抗(きっこう)していた。後年ナポレオンが「かつて自分の経験したもっとも激しい戦い」と語ったこの戦闘は、同日の朝5時半に始まり、日没に終わった。この戦闘で、ロシア軍側は23名の将軍を含む4万4000の死傷者を、フランス軍側は47名の将軍を含む3万(ロシアの資料では5万8000)の死傷者を出したが、ついに勝敗は決しなかった。フランス軍はロシア軍の陣地を占領したことで、他方ロシア軍はフランス軍のモスクワ進入を食い止めたことで、両軍はそれぞれ勝利を宣した。しかし翌日になって、ロシア軍総司令官のクトゥーゾフは全軍を撤退させ、ボロジノをナポレオン軍に引き渡した。しかし、ナポレオンの期待に反してロシアの捕虜は意外に少なく、ロシア側の戦闘意欲の高いことが示された。トルストイは『戦争と平和』のなかでこの戦闘の模様を描いている。
[外川継男]
『両角良彦著『1812年の雪』(1981・筑摩書房)』▽『アンリ・トロワイヤ著、工藤庸子訳『アレクサンドル1世』(1982・中央公論社)』