ボート(その他表記)boat

翻訳|boat

デジタル大辞泉 「ボート」の意味・読み・例文・類語

ボート(boat)

オールでこいで進む洋式の小舟。端艇たんてい 夏》
船。汽船。「モーターボート」「フェリーボート

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精選版 日本国語大辞典 「ボート」の意味・読み・例文・類語

ボート

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] boat )
  2. 動力を用いず、オールで水を掻いて進むかたちの西洋風の小舟。艦船に搭載し、荷物や人員の積みおろしや連絡などに用い、また、川や湖水に浮かべて競技や娯楽などに用いる型のものなど種々ある。
    1. [初出の実例]「『ボート』哨船の大なるもの」(出典:颶風新話(航海夜話)(1857)凡例)
  3. 他の語に付いて、船の意を表わす。「モーターボート」「フェリーボート」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「ボート」の意味・わかりやすい解説

ボート
boat

本来は小さい舟のこと。しかしフェリーボートとかUボートなど,かなり広い意味にも使う。日本語としては西洋型の小舟を意味する。そして公園の貸しボートや競技用のエイト,フォア,スカルなどオールでこぐスポーツないし娯楽用のものを指すことが多い。エイトとフォアはそれぞれ8人と4人が1本ずつオールをこぐが,スカルは1人で両玄2本のオールをこぐ。いずれも超軽量の船体,前後に滑動する座席,張り出したオール受座を使い,飛ぶように水面を滑る高性能を誇る。
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ボートをこいで争う競技はボートレースboat raceともいうが,英語では総称的にrowingを使うことが多い。日本では漕艇ともいう。カヌーは含めない。オールを左右2本持って1人でこぐスカルscull方式を区別するときはスカリングという。こぎ手はオアズマンoarsmanといい,スカルの場合はスカラーscullerである。ボートやヨットの競技会をレガッタregattaと呼ぶことがあるのは,ベネチアゴンドラによる〈競争〉のなごりである。

古代エジプトにもオールでこぐ船が存在し,ギリシア・ローマ時代にはガレー船もつくられたが,スポーツとしての記録はウェルギリウスの《アエネーイス》にうたわれたアエネアス主催のボートレースが最初である。近代のレースは16~17世紀イギリスのテムズ川で,貴族にやとわれている職業的な漕手たちが行った〈こぎくらべ〉に始まり,1716年には喜劇俳優ダゲットThomas Doggett(?-1721)がジョージ1世の即位を記念してロンドン橋~チェルシー間のレースを創設したことが知られる。賞品(代金)として銀の紋章(バッジ)をつけたオレンジ色の服(コート)が贈られ,これは現在も〈ダゲッツ・コート・アンド・バッジ・レースDoggett's Coat and Badge race〉としてシングルスカルで行われている。しかし本格的にテムズ川レガッタといわれるものは1768年あるいは75年を最古とする。19世紀に入るとボート競技はますます盛んになり,1830年代にはアメリカやドイツにもアマチュアクラブが生まれたが,プロの漕手も第1次世界大戦前まで存在した。

 1829年にはオックスフォードケンブリッジの対校レース(単にBoat Raceという)が始まった。このときはヘンレー・オン・テムズで行われ(現在はパトニーからモートレークまで6.8km),これに刺激されて39年にヘンレー・レガッタHenley Regatta(1851年からヘンレー・ローヤル・レガッタHenley Royal Regattaと呼ぶ)が設けられた。後者は毎年7月に4日間にわたって行われ,外国からの参加者も多い。アメリカのイェールハーバードによる対校レース(1852開設)も伝統のあるものとして知られる。1892年に国際漕艇連盟Fédération internationale des sociétés d'aviron(FISA)が創設された。オリンピック種目としては,96年の第1回アテネ大会に舵なしペアが予定されていたが,荒天のため中止,1900年のパリ大会から行われ,76年のモントリオール大会には女子6種目が加わった。優勝回数はアメリカを筆頭に,ドイツ,ニュージーランド,オランダ,ソ連(現,ロシア),カナダなどがこれに迫っている。1962年からは世界選手権大会も開かれているが,人気は欧米の著名レースには及ばない。2007年11月現在FISA加盟国・地域は118である。

 日本では幕末期にも,幕府海軍の水兵が軍艦のボート(バッテイラと呼んでいた)をこいだり,横浜の在留外人がクラブをつくって本国からボートを取りよせていたが,1873-74年ころ東京大学の学生がアメリカの捕鯨船の中古ボートを7~8隻買ってこぎまわったのがアマチュアのボートの始まりという。82年に隅田川の向島で天皇行幸のもとに海軍競漕会が催され,翌年にはさらに華やかになり,学生の間にもボートへの関心がいっきょに高まった。84年には東京大学走舸組(ボートクラブの前身)のレースも開かれ,85年の横浜外人クラブと東大のレースでは初の滑席艇が用いられた。このころには,大学,高校のほか,多くの中学や実業団にもクラブが結成されギグ(小型カッター)の新造も盛んになっている。1910年ころにはアウトリガーの滑席式シックスが出現した。20年日本漕艇協会が創立され,同年エイトの学生選手権大会,24年全日本選手権大会が開始された。オリンピックには28年第9回アムステルダム大会(フォア,スカル)から参加,32年からはエイトにも出場しているが,これまでのところ,56年第16回メルボルン大会の準決勝進出(慶大エイト)が最高の成績である。日本と世界のトップではオープン・クラスのエイト(2000m)で20秒前後の差があり,レベルアップがのぞまれる。

現在のスポーツ競技のボートは1~8人でこぎ,使用するボートはこぎ手の座席が前後に移動する滑席sliding seat式と,固定席fixed seat式に大別されるが,現在はすべて滑席式である。オールoar(かいともいい橈の字をあてる)は艇舷から外に張り出したリガー(支柱)によって支えられたクラッチ(ローラックrowlockともいう)に通し,てこの効果を存分に利用する。船体は,外板の張り方で,シェル艇,ナックル艇クリンカー艇の3種類ある。クリンカー艇はボートの外板が重なり合った鎧張りclinkerになっているもの。ナックル艇は日本独自の規格艇で,船底が角型knuckleでバランスが良く普及用である。国際レースでは外板を平張りshellにしたシェル艇を用いる。外板の材質は薄く軽いものがよく,アメリカヒノキやスパニッシュシダーの合板,プラスチック,カーボンファイバーなどの化学製品が用いられる。艇の材質,大きさには規制はないが,1982年以降,国際漕艇連盟は種目による重量制限を設定,金のかかる軽量化競争に歯止めをかけ,例えばエイトのシェルは重量93kg以上,1人こぎのシングルスカルは14kg以上と定めた。

オリンピックでの競技種目は,(1)シングルスカルsingle sculls,(2)ダブルスカルdouble sculls,(3)クオドルプルスカル(4人こぎスカル)quadruple sculls,(4)舵手なしフォアfour-oared shell without coxswain,(5)舵手なしペアpair-oaredshell without coxswain,(6)エイトeight-oared shell with coxswain,eightsであり,舵手なしフォアのみ男子種目,他はすべて男女双方の種目となっている。以上男子6,女子5種目が体重無差別で行われ,1996年アトランタ・オリンピックから軽量級(クルーの平均体重が男子70kg以下,女子57kg以下)として,(1)舵手なしフォア(男子),(2)ダブルスカル(男子,女子)が加わった。舵手なし(舵なし)は漕手が足で操作する。スカルには舵がないが,女子のクオドルプルスカルには舵と舵手がつく。クオドルプルスカルは1974年に採用された。

 公式レースは,いずれの種目も男子,女子とも2000mの直線静水コースで行われ,タイムに関係なく着順のみで勝敗を決めるので,敗者復活戦の方式が採用される。

スタートは,スリット(見通し機)で各艇のへさきをそろえ,審判の旗を合図にこぎ出す。フライングを2度犯すと失格になる。各コースはブイによってセパレートされている。コースを侵害し,相手のストロークを妨害したと認められたときは失格となる。レースでは,各クルーがピッチに秘策を練る。ピッチは1分間にこぐストロークの回数で,キャッチ(オールをこぎ入れること)から6本目のキャッチまで正味5本分の時間を測定し,その秒数で300を割って算出する。一流のクルーならばスタートダッシュでピッチ50前後,スパートで43前後,それ以外のときはコンスタントピッチ(平常ピッチ)といい,エイトでピッチ36~38ぐらいである。ストロークはオールのブレード(かい先)を水中で引くことで,キャッチからフィニッシュ(こぎ終り),そしてブレードを抜いて回転する(フェザリング)までむだなく力強く行うことがたいせつである。クルーはかならず定員を乗せなければならない。エイトでは船首寄りから,バウbow(舳手),2~7番,ストロークstroke(整調)と呼ぶ。舵手(コックスcoxswain)は最後部または先頭部に位置し,全体のピッチに注意し号令をかけるとともに,舵の操作を受け持つ。近年はトップ・コックスの傾向が強い。舵手は軽量が有利であるが,50kgに達しない場合は砂袋を積んで差を埋めなければならない。

 レースの着順は,スタートと同様に艇のへさきで判定する。各艇の先端には危険防止のために,直径4~5cmのゴム製の白球をつけることが義務づけられているが,これが写真判定にも役だつのである。艇差は艇の全長を基準にし,先行艇の最後部と後続艇の先端がかかっていれば1艇身差という。それより離れると〈水があくdaylight〉といい,7艇身以上は〈大差〉である。エイトの全長は15~18mで,船首,船尾の上部それぞれ約1.5mは波よけの防水布が張ってあるのでキャンバスと呼ばれ,これを目安に,前部トップキャンバスにかかる1~2mのきわどい差を〈キャンバス差〉,4分の3艇身を超えて後部ラダーキャンバスにかかる差を〈逆キャンバス差〉という。なお,レースの方法としては,バンピングレースbumping raceと呼ばれる,狭い川でいっせいにスタートし,前のボートにタッチ(バンプ)した回数で順位を入れ替え,これを数日くりかえし,優勝者に〈川の先頭Head of the River〉の称号を与えるもの,あるいは主として冬季に行われる長距離のタイムレースで,同じく優勝者に〈川の先頭〉の栄誉を与えるものなどがイギリスで行われている。

 ボートのテクニックの改革の一つとして知られるものに,フェアベーン漕法がある。ケンブリッジ大ジーザス学寮のコーチとなったフェアベーンStephen Fairbairnが1920~30年代に唱えたもので,かい先(ブレード)の動きに重点を置き,自然に,動的にこぐことを説き,それまでのスタイルやフォームを重視する伝統派と対立した。これを受けついでドイツのアダムKarl Adamは感覚の重視,インタバル訓練法などを採用,上体を動かさない漕法で成功し,1958~68年の国際競技では1回しか負けなかった。そして,1959年のヨーロッパ選手権からは幅の広いブレードを使用,以後その開催地の名をとってマコン型ブレードと呼ばれ各国に普及した。92年バルセロナ・オリンピック以後は,ブレードの下半分の面積を広くしたなた型(チョッパーchopper)オールが世界的に広まっている。また,リガーの並び方にも改良がみられる。一般には左右交互にリガーが配置されるが,ボートはどちらかに曲がって進行しやすく,これを解消するため順序をかえ,例えば2番と3番,あるいは4番と5番を同じ側にする方法が1956年に,イタリア・チームによって考案された。さらに,81年の世界選手権ではドイツのシングルスカルに,リガーとストレッチャー(足掛け)がスライドし,席は固定した機構が採用され,体重の移動によるボートのピッチングを減少して圧勝した例もある。

 なお,社団法人日本漕艇協会は,1998年度から名称を社団法人日本ボート協会に変更した。〈漕艇〉の文字は,79年目にして〈ボート〉に衣替えする。水と共存して,より親しみやすいスポーツに発展するために,これも時代の趨勢(すうせい)だろうか。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボート」の意味・わかりやすい解説

ボート
ぼーと
boat

本来は櫂(かい)やオール(橈(かい))で漕(こ)ぐか機関によって推進する小型の無甲板艇の総称。短艇、端艇ともいった。その後、港内や湾内、内海などでの人や荷物の輸送や作業、海洋レジャーなど使用用途の多様化とともに呼び方も変わり、このような用途に使われる小舟艇や小型の船の総称となっている。

 短艇や救命艇のほか、連絡や人の輸送に従事する通船(つうせん)(ランチ)・渡船(とせん)(フェリーボート)、パイロットボート、検疫ボート、税関艇(カストムボート)、他船の曳航(えいこう)や係留作業等に従事するタグボート(引き船)や綱取りボート、巨大船や危険物積載船の嚮導(きょうどう)や進路警戒にあたるエスコートボートなど、用途に応じ種々のものがある。

 ボートと外洋を航行する船舶shipとは区別してよばれるが、スチームボート(汽船、スチームシップ)、カーゴボート(貨物船、カーゴシップ)、パッセンジャーボート(客船、パッセンジャーシップ)など、合成語にボートを用いる場合もある。

[岩井 聰]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボート」の意味・わかりやすい解説

ボート
boat

甲板のない小型船の総称。オール (櫂) で漕ぐが,エンジンをつけたものもある。また河川や外洋を航行するすべての船をさす場合もあるが,このときはスチームボート (汽船) ,パッセンジャボート (客船) ,カーゴボート (貨物船) ,フェリーボート (渡し船) ,モータボートなどのように他の言葉を組合せて使うことが多い。普通オールで漕ぐボートは短艇と端艇に分れ,短艇にはランチ,カッター,救命艇など,端艇にはお椀ボート,競漕艇,スカルなどがある。

ボート
boat

燃焼しようとする試料を入れるボート状の化学実験器具。磁器製,石英製,アルミナ製などがある。銅や白金などの金属製のものも使用される。特に有機元素分析においては,試料をボートに入れ,燃焼管の中で燃焼し,炭素,水素,窒素などの元素分析が行われる。

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百科事典マイペディア 「ボート」の意味・わかりやすい解説

ボート

西洋式小型船。手こぎのローボート,セールボート,モータボートに大別される。ローボートには娯楽用のおわんボート,カッター,競漕艇などがある。大型のものでもフェリーボートなどと称することがある。→ボートレース

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知恵蔵 「ボート」の解説

ボート

ボートレースは、別名レガッタとも呼ぶ。漕手が両手に1本ずつのオールを持って漕ぐスカル種目(シングル、ダブル、クオドルプル)と、両手で1本のオールを持って漕ぐスイープ(ローイング)種目(ペア、フォア、エイト)とに大別される。それらはさらに舵手(コックス)の有無により区別され、1000〜2000mのコースにおいてレースが行われる。また日本独自の普及艇としてナックルフォアがある。

(吉田章 筑波大学教授 / 2007年)

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