引き船(読み)ひきぶね(英語表記)tug boat

日本大百科全書(ニッポニカ) 「引き船」の意味・わかりやすい解説

引き船
ひきぶね
tug boat

他の船舶や、推進器をもたない艀(はしけ)、ポンツーン(箱船)、筏(いかだ)、海洋構造物などを曳航(えいこう)するのに用いる船。タグボートともいう。押す方式と引く方式があり、押す方式の場合をとくに押し船という。曳航される船舶や艀などの推進と操縦の役割のために、船体が小さくとも大出力の機関を備えて曳引力を大きくし、フォイト・シュナイダープロペラやコルトノズル装置、Z型推進装置など特殊な推進器を備えて操縦性を増し、引くときの大きな反作用に対しても十分な安全性を保持するように配慮されている。

 引き船は使用水域によって航洋引き船、沿岸引き船、港内引き船、河川引き船などとよばれる。航洋引き船と沿岸引き船は曳引力が大きく航洋性が優れ、機関故障などで自航能力を失った船舶の救難曳航、大型の艀やポンツーン、海洋構造物やプラントなどの洋上曳航に用いられる。港内引き船には、他の船舶などを曳航するものと、一般船舶の離・着岸や誘導などの操船支援にあたる操船用引き船とがある。大型船舶の操船用引き船は数千馬力の機関を備えている。河川や内海の引き船には、艀などを後ろから押して推進する押し船(プッシャーバージ)も使われている。

岩井 聰]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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