改訂新版 世界大百科事典 「マアッリー」の意味・わかりやすい解説
マアッリー
al-Ma`arrī
生没年:973-1057・58
北シリア,マアッラ・アンヌアマーン生れの特異な詩人。4歳のとき天然痘により失明したが,博覧強記で知られた。当時文芸が栄えていたアレッポで学んだが,これに飽き足らず,30歳余でバグダードに遊学している。しかし失意のうちに彼は首都を辞して故郷に帰るが,その間に最愛の母は他界していた。その後この盲目詩人は,長い世捨人の生活を送っている。人生の無常にたいする深い諦念,社会生活の無軌道ぶり,愚かな為政者,既成宗教にたいする冷やかで辛辣な批判は,彼の詩作を比類ないものにしている。詩集《ルズーミーヤート》のほか,ダンテの《神曲》に影響を与えたともいわれる散文《宥(ゆる)しの書》で知られている。
執筆者:黒田 壽郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報