マアッリー(読み)まあっりー(英語表記)Abū 'l-‘Alā al-Ma‘arrī

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マアッリー」の意味・わかりやすい解説

マアッリー
まあっりー
Abū 'l-‘Alā al-Ma‘arrī
(973―1057)

アラビア詩人。北シリアで生まれた。若くして盲目となる。バクダードで仕官を志したが、不遇のうちに故郷へ隠退し、著述詩作に専念した。初期の詩は『サクト・アッ・ザンド(燃え木の輝き)』に、後期の詩は『ルズーミーヤート』(正式には『ルズーム・マー・ラー・ヤルザム』。不可欠ではない義務の意で、韻律のむずかしさをさす)に収められている。初期には詩人ムタンナッビーの影響が認められるが、後期にはペシミズムが色濃くなり、孤高を誇るようになる。

 散文体の代表作は『ゆるしについての書』(1032)である。これは二部からなり、第一部で著者の楽園と地獄への訪問が語られている。この作品はダンテ『神曲』の構成に影響を及ぼしたと考えられている。また、近代アラビア文学の巨匠の一人ターハー・フセインにもその影響がみられる。

矢島文夫

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