マウソロス(その他表記)Maussōllos

改訂新版 世界大百科事典 「マウソロス」の意味・わかりやすい解説

マウソロス
Maussōllos
生没年:?-前353

アケメネス朝ペルシア支配下にあった小アジアのカリア総督在職,前377-前353年。内紛状態にあった当時のペルシア帝国の地方総督として,彼はほとんど独立の地位を持ち,アケメネス朝に反抗をも試み,ギリシア植民市からギリシア本土の政治にも影響を及ぼした。ギリシア文化の保護者として知られ,生前から,また彼の死後は妹であり妻であるアルテミシアArtemisiaにより,首都ハリカルナッソスにギリシア人の芸術家,技術者を集めて壮麗な廟が建てられ,世界の七不思議のひとつとなった。以後ローマ皇帝の廟,大規模な廟一般をマウソレウムマウソレイオン)と呼ぶのはこれによる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マウソロス」の意味・わかりやすい解説

マウソロス
まうそろす
Mausolos
(?―前353)

アケメネス朝ペルシア支配下の小アジア、カリアの総督(在任前377~前353)。彼は、事実上独立の地位を保ち、総督駐在地をミラサからハリカルナッソスに移した。紀元前362年小アジアの他の総督たちの起こした対ペルシア反乱に加わり、またアテネと同盟諸ポリス間に行われた同盟市戦争(前357~前355)では、離反ポリスを助けて、ロードス島とコス島を勢力範囲に収めた。ギリシアの学芸を愛し、ハリカルナッソスに自分のための壮麗な廟(びょう)、マウソレイオンMausoleionの建立を企てた。妹で、カリアの慣習に従い妻となったアルテミシア2世Artemisia Ⅱ(?―前351)は、彼の死後、マウソレイオンの建造工事を引き継いで、その完成に導いた。古代人は、この建物を世界七不思議の一つに数えた。

[清永昭次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マウソロス」の意味・わかりやすい解説

マウソロス
Mausōlos

[生]?
[没]前353/前352
アケメネス朝ペルシアのカリアのサトラップ (州総督) 。アナトリアのサトラップたちとともにアルタクセルクセス2世に対して反乱を起し,事実上カリアの支配者となり,リュキアイオニアおよびギリシア諸島を征服した。またロードス島やコス島,キオス島の住民と組んでアテネと戦い (前 357~355) ,カリアの首都を伝統的なミュラサからハリカルナッソスへ移した。そこでみずからの墓マウソレイオンの建築に着手した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「マウソロス」の解説

マウソロス
Mausolos

アナトリア西南部カリアのサトラップ(在任前377~前353)。ただし事実上アケメネス朝ペルシアから独立していた。ギリシアの学芸を好み,新首都ハリカルナッソスにみずから計画し着工した彼の廟は,彼と妻アルテミシアの死後に完成し,その壮麗さゆえ,古代世界の七不思議の一つとたたえられた。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のマウソロスの言及

【墓地】より

…しかし,都市によっては壮麗な墓も見られ,クサントスXanthosのネクロポリスの墳墓群は著名である。また,小アジア,ハリカルナッソスの太守マウソロスの墓(前350ころ)は古代の七不思議の一つとして知られ,イオニア式列柱廊をもつ26m角の角塔状の壮麗な墳墓で,以後その名〈マウソレウム〉は,壮大な墓廟一般を指すようになった。これらイオニア地方の塔状墳墓の形式は,のちのイスラム時代にまで影響を残した。…

※「マウソロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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