マシャード・デ・アシス
Joaquim Maria Machado de Assis
生没年:1839-1908
ポルトガル語文学を代表するブラジルの作家。黒人の血をひき,貧しい家庭に生まれ,印刷所で働きながらヨーロッパ文学,古典的素養を身につけ,ロマン主義の末期に文壇にデビューした。新聞のコラム,詩,戯曲,短・長編小説と幅広く活躍し,ブラジル文学アカデミーの初代会長を務めた。初期の作品にはロマン主義的傾向が認められるが,円熟期の作品(1880年以降,おもに短・長編小説)は,当時ブラジルで一世を風靡(ふうび)していた写実・自然主義,象徴主義などの枠のなかに収まるものではなく,いずれも当時のリオ・デ・ジャネイロの上流・中流社会を描き,イギリス風のユーモア,ペシミスティックな人生観,鋭い心理分析,簡潔で象徴性に富んだ文体を特徴としている。主要作品は次の三つの小説である。《ブラス・クーバスの死後の回想》(1881),《キンカス・ボルバ》(1891),《むっつり屋》(1900)。
執筆者:高橋 都彦
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マシャード・デ・アシス
ましゃーどであしす
Joaquim Maria Machado de Assis
(1839―1908)
ポルトガル語文学を代表するブラジルの作家。黒人の血を引き、リオ・デ・ジャネイロの貧しい家庭に生まれる。独学でヨーロッパ文学、古典的素養を修め、あらゆる文学ジャンルで活躍し、ブラジル文学アカデミーの初代会長を務めた。もっとも才能を発揮したのは短・長編小説で、当時のリオ・デ・ジャネイロの上・中流社会を描き、イギリス風のユーモア、ペシミスティックな人生観、鋭い心理分析、簡潔で象徴性に富んだ文体を特徴とする。主要作品は多くの短編集のほか、三つの長編小説『ブラス・クーバスの死後の回想』(1881)、『キンカス・ボルバ』(1891)、『むっつり屋』(1899)。
[高橋都彦]
『高橋都彦訳『マシャード短篇選』(1982・大学書林)』
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百科事典マイペディア
「マシャードデアシス」の意味・わかりやすい解説
マシャード・デ・アシス
ブラジルの作家。リオ・デ・ジャネイロで,黒人の父とポルトガル系の母の間に生まれた。幼くして両親を失い,働きながら独学で文学的素養を身につけた。1880年以降に発表した小説《ブラス・クーバスの死後の回想》《キンカス・ボルバ》《むっつり屋》は鋭い人間観察,心理描写,イギリス風のユーモアで当時のリオの上流社会を描き,ブラジル文学を代表する傑作である。ほかに多くの優れた短編集,文学評論がある。ブラジル文学アカデミーの初代会長。
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世界大百科事典(旧版)内のマシャードデアシスの言及
【ラテン・アメリカ文学】より
… ドイツの一元論,イギリスの進化論,フランスの実証主義などの影響を受けた写実・自然主義の時代(1870‐90)に入ると,アルイジオ・アゼベド(1857‐1913)の《混血児》(1881),ラウル・ポンペイア(1863‐95)の《寄宿学校アテネウ》(1888)など,地方の風物やインディオなどよりは特定の社会やその構成員が描かれるようになる。ロマン主義末期に登場し,とくに小説《ブラス・クーバスの死後の回想》(1881)以降,独自の世界をつくりあげていった[マシャード・デ・アシス]はブラジル文学最大の作家である。詩においては官能的なオラーボ・ビラック(1865‐1918)は高踏派を,黒人詩人クルス・イ・ソウザ(1861‐98)は象徴主義(1890‐1900)を代表している。…
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