日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンズー」の意味・わかりやすい解説
マンズー
まんずー
Giacomo Manzù
(1908―1991)
イタリアの彫刻家。ベルガモに生まれ、職人的な技術を身につけるが彫刻家を志して1928年パリに赴き、30年ミラノに定住して古代ギリシア、ローマ、エトルリアに触発された最初の作品をつくる。36年にふたたびパリに旅行し、ロダンや印象派絵画に関心を示す。しかしその後徐々にこれらの影響を離れ、力強い量感と構成力を獲得する。ローマで見た聖職者の衣装に強くひかれ、38年に『枢機卿(すうききょう)』を制作するが、この主題はその後も繰り返される。41年ミラノのブレラ美術学校の教師となるが短期間で辞職。第二次世界大戦中、ナチの暴挙に憤りを感じてパルチザンを象徴させた『キリストと将軍』(ローマ国立近代美術館)を制作。戦後の代表作として、ローマのサン・ピエトロ大聖堂の正面扉『死の門』(1952~64)、ザルツブルクのカテドラルの『愛の門』(1955~58)、ロッテルダムのサン・ロレンツ寺院の『平和と戦争の門』(1965~69)など、記念碑的な作品がある。彼の主題は宗教的なものが多いが、晩年には男女の抱擁を扱った大胆な作品もある。69年ローマ郊外アルデアに退き、そこに個人美術館を創設した。
[小川 煕]