日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーチャント・バンク」の意味・わかりやすい解説
マーチャント・バンク
まーちゃんとばんく
merchant bank
18世紀末から19世紀前半においてロンドンが国際金融市場としてもっとも華やかなころにロンドン市場を支え、かつそれを代表するマーチャント(商人)で、同時にバンカー(銀行家)のことをいう。その意味で、今日では歴史的な存在と理解したほうが正確であろう。もちろん、かつてのマーチャント・バンクが今日でも生き残ってはいるが、国際金融のなかでの影響力はアメリカの投資銀行に及ばない。
マーチャント・バンクは、初期には貿易手形の引受けやディーリング(金融商品の売買)に関与し、比較的安全度の低い業務をやっていたが、商人でもあることから国際的な取引の情報収集や分析は他の追従を許さなかった。また、彼らは家族の絆(きずな)をたいせつにし、シンジケート団を組織することで危険の分散をしていた。そして、アメリカの投資銀行とタイアップすることによってアメリカでの収益を確保していた。彼らの代表としてベアリングやハンブロ家それにロスチャイルド家などがあげられる。
マーチャント・バンクをみる場合、その盛衰は国際金本位体制と結び付いている。第二次世界大戦後、IMF(国際通貨基金)体制が登場するとともに、国際金融市場での主役の立場をアメリカの投資銀行に譲った。
[石野 典]