日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミエハタンポ」の意味・わかりやすい解説
ミエハタンポ
みえはたんぽ / 三重葉丹宝
Mie sweeper
[学] Pempheris nyctereutes
硬骨魚綱スズキ目ハタンポ科に属する海水魚。相模湾(さがみわん)から九州南岸にかけての太平洋沿岸、台湾海域に分布する。体高は高く、強く側扁(そくへん)し、体高は体長の約44%。体の背外郭は背びれの起部までは緩く湾曲し、その後は尾柄(びへい)に向かってほとんど直線状に降下する。腹外郭は臀(しり)びれ起部まで一様に強く湾曲し、その後直線状に上昇し、尾びれ基底近くに達する。胸部の正中線上に隆起線があり、横断面はV字形。吻(ふん)は著しく短い。目は著しく大きく、眼径は目の後縁から鰓蓋(さいがい)の後縁までの距離にほとんど等しい。口は大きくて、斜位。上顎(じょうがく)の後端は目の中央部下に達し、下顎は上顎よりも突出する。上下両顎、鋤骨(じょこつ)(頭蓋床の最前端にある骨)、口蓋骨に微細な歯がある。鰓耙(さいは)は上枝に7本、下枝に19本。体側鱗(りん)は小さい櫛鱗(しつりん)で、1層に並び、薄くてはがれやすい。鱗(うろこ)の上下にはくびれがなく楕円(だえん)形。側線は鰓孔の上端から尾びれの後端まで達する。側線有孔鱗数は67~80枚。背びれの起部から側線までの横列鱗は約8~10枚。臀びれの基部は小鱗をかぶる。背びれは1基で小さく、6棘(きょく)9~10軟条。体の中央部より前方に位置し、基底長は最長鰭条(きじょう)長よりすこし短い。臀びれは背びれ基底の後端のやや前方から始まる。基底長は長く、体長の40%以上で、3棘41~45軟条。尾びれの後端は浅く二叉(にさ)する。体色は全体に暗赤褐色で、吻端と背びれは先端が黒い。沿岸の岩礁域にすみ、日中は大きい群れで岩やサンゴの下や穴の中にいて、夜間に外に出て摂餌(せつじ)する。最大全長は18センチメートルほどになる。定置網などでほかのハタンポ類と混獲されるが、一般にそれほど利用されていない。本種を台湾やベトナムに分布する種P. nyctereutesと別種であるとする研究者もいる。
[尼岡邦夫 2023年5月18日]