ハタンポ(読み)はたんぽ(その他表記)sweepers

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハタンポ」の意味・わかりやすい解説

ハタンポ
はたんぽ / 葉丹宝
sweepers

硬骨魚綱スズキ目ハタンポ科Pempheridaeあるいはハタンポ属Pempherisに属する海水魚の総称。太平洋、インド洋および西大西洋の熱帯から温帯にかけて、外洋に面した海の浅い岩礁地帯、まれに汽水域に群れをなしてすんでいる。日中は洞穴などで群れていて、夜になると分散して甲殻類や多毛類などを食べる。全長は30センチメートルくらいになる。体は側扁(そくへん)し、多くの種では体高は胸部でもっとも高く、尾柄(びへい)に向かって直線状に急角度で低くなる。目は著しく大きく、眼径は吻長(ふんちょう)よりもかなり大きい。口はいくぶん大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の中央部下に達する。上下両顎と口蓋(こうがい)部に小さな歯がある。背びれは1基で、基底は短く、体のほとんど中央部に位置する。4~7棘(きょく)7~12軟条で、棘は後方に向かって段階的に長くなる。臀(しり)びれは低くて、基底は著しく長い。多くの種は腹部幽門垂(ゆうもんすい)や直腸と関連した発光器をもち、発光物質を餌(えさ)から取り込んでいるとみられる。

 ハタンポ科には、体高が低く、体高が体長の36%以下のキンメモドキParapriacanthusと、体高が高く、体高が体長の39%以上のハタンポ属の2属がある。世界から26種しか記録されていない小さな科である。2017年(平成29)の、日本の魚類研究者の小枝圭太(こえだけいた)(1986― )の論文によると、日本からはキンメモドキ属のキンメモドキ1種と、ハタンポ属のツマグロハタンポリュウキュウハタンポミナミハタンポミエハタンポユメハタンポ、ダイトウハタンポP. ufuagariおよびキビレハタンポP. vanicolensisの7種が知られている。

片山正夫・尼岡邦夫 2021年2月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ハタンポ」の意味・わかりやすい解説

ハタンポ
sweepers

スズキ目ハタンポ科ハタンポ属Pempherisの魚の総称。日本からはミナミハタンポ,ツマグロハタンポ,ミエハタンポ,リュウキュウハタンポの4種が報告されている。リュウキュウハタンポは沖縄以南に,他の3種は本州中部以南の沿岸に分布する。大きくなる種でも全長15cmに達する程度である。岩礁域の岩陰などに大群をつくっていることが多く,見かけることも多いため,ウボゼ,ワタンポ,ワタボなど地方名も多いが,ハタンポ類の混称として用いることが多いようである。体は卵円形で,尾部に向かって細くなっている。小型の動物プランクトンを食べている。ハタンポ科のうち他属のキンメモドキはウミホタルの発光物質を利用する発光器をもつことが知られているが,ハタンポ属のものは発光器をもっていない。定置網で漁獲される。大きなものを干物にして食べる地方があるが,ほとんど利用されない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハタンポ」の意味・わかりやすい解説

ハタンポ

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