ミシシッピワニ(その他表記)Mississippi alligator
American alligator
Alligator mississippiensis

改訂新版 世界大百科事典 「ミシシッピワニ」の意味・わかりやすい解説

ミシシッピワニ
Mississippi alligator
American alligator
Alligator mississippiensis

アリゲーター科のおとなしい大型ワニ。北緯35°以南のアメリカのミシシッピ川下流域とフロリダ半島に分布。全長2~3m,最大は約5.7mであるが,現在では大型個体はあまり見られない。吻(ふん)部は幅広く扁平で吻端は丸みを帯びる。口を閉じると原則として下あごの歯は上あごの内側に隠れるが,大きな第4歯がはみ出す個体もある。

 後肢のみずかきが発達し遊泳が巧みで,河川,湖沼淡水にすむ。マスクラットなどの小哺乳類,小鳥,魚,カエル,ヘビなどをとらえるが,子ワニの間はザリガニなどの甲殻類,水生昆虫が主食性質はおとなしく人を攻撃することはほとんどない。6月ごろ,水辺に泥と草,木の葉や小枝で直径1.5~2.5m,高さ1mほどの巣をつくり,15~80個ほどを産卵する。巣の中の発酵熱で孵化(ふか)が促進される。雌は巣を守り,子ワニが孵化する手助けをするとともに,翌春までともに過ごしてめんどうを見る。孵化直後は全長25cm前後。子ワニは6年ほどで成熟し,20~50年ほど生きる。
ワニ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミシシッピワニ」の意味・わかりやすい解説

ミシシッピワニ
みししっぴわに
Mississippi alligator
American alligator
[学] Alligator mississippiensis

爬虫(はちゅう)綱ワニ目アリゲーター科のワニ。アメリカ合衆国の北緯35度以南のミシシッピ川下流域、メキシコ湾沿岸地方、フロリダ半島に分布する。全長2~3メートル、最大5.7メートルに達するアリゲーター科の最大種であるが、現在では大形個体はあまりみられない。吻(ふん)部が扁平(へんぺい)で幅広く、吻端は丸みを帯びる。河川、湖沼の淡水に生息し、後肢には水かきが発達して遊泳が巧みである。性質はおとなしく、餌(えさ)は小哺乳(ほにゅう)類、水鳥、魚、カエル、ヘビなどで、幼体ではザリガニなどの甲殻類、水生昆虫が主食である。雌は初夏になると水辺に泥と植物や枯れ枝で巣をつくり、15~80個ほどを産卵し、これを守る。さらに雌親は翌春まで子ワニと過ごし世話をする。

[松井孝爾]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミシシッピワニ」の意味・わかりやすい解説

ミシシッピワニ
Alligator mississippiensis; American alligator

ワニ目アリゲーター科。体長4~5mで,ときに 6mに達する。体の背面黒みがかった緑褐色で,腹面は白っぽい。吻端は丸く扁平で,頭,胸部の間のくびれがほとんどない。後肢に蹼 (みずかき) がよく発達している。夏に巣をつくり,直径 7cmぐらいの卵を 15~80個産む。産卵後,雌は土をかぶせてその巣を守り,孵化のとき子ワニが土中から脱出するのを手伝うという。肉食性であるが性質は温順で,ヒトを襲うことはきわめてまれとされる。北アメリカ南東部に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のミシシッピワニの言及

【アリゲーター】より

カイマンワニ【松井 孝爾】。。…

【アリゲーター】より

… アリゲーター科は頭骨,鱗板などの構造の相違により,アリゲーター類,カイマン類の2群に分けられる。前者はヨウスコウワニとミシシッピワニA.mississippiensis(イラスト)の2種からなる。ミシシッピワニはアリゲーター類の最大種で,ミシシッピ川下流域からメキシコ湾沿岸およびフロリダ半島の淡水に生息する。…

※「ミシシッピワニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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