改訂新版 世界大百科事典 「ミスカワイフ」の意味・わかりやすい解説
ミスカワイフ
Miskawayh
生没年:?-1030
ブワイフ朝時代の史家,哲学者。イブン・ミスカワイフIbn Miskawayhとも呼ばれる。ブワイフ朝の君主ムイッズ・アッダウラの宰相ムハッラビーMuhallabīの下で書記を務め,アドゥド・アッダウラ時代まで宮廷にあって,同朝内部の人間関係,政治事情に通じていた。この見聞が彼の史書《諸民族の試みTajārib al-Umam》の,ブワイフ朝関係の部分に生かされている。宗教的な粉飾が少なく,人物描写が生彩に富んでいて,同書の史料価値をきわめて高いものにしている。哲学関係の著書には,《倫理の浄化Tahdhīb al-Akhlāq》,倫理に関する逸話集である《アラブ,ペルシア人の諸規範Ādāb al-`Arab wal-Fars》が知られている。
執筆者:清水 宏祐
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報