ミナミフトスジイシモチ(読み)みなみふとすじいしもち(その他表記)blackstripe cardinalfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミナミフトスジイシモチ」の意味・わかりやすい解説

ミナミフトスジイシモチ
みなみふとすじいしもち / 南太筋石持
blackstripe cardinalfish
[学] Ostorhinchus nigrofasciatus

硬骨魚綱スズキ目テンジクダイ科コミナトテンジクダイ亜科スジイシモチ族に属する海水魚。伊豆諸島、小笠原(おがさわら)諸島、駿河湾(するがわん)以南の太平洋岸、屋久島(やくしま)、南西諸島、台湾南部、ニュー・カレドニア、紅海、モザンビークなど太平洋とインド洋に広く分布する。体は楕円(だえん)形で、側扁(そくへん)する。頭部背縁は背びれ起部から吻端(ふんたん)まで直線的で、吻端はとがる。目はおよそ吻長に等しい。上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下近くに達する。上下両顎には犬歯状の歯がない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁は鋸歯(きょし)状。鰓耙(さいは)は上枝に2~4本、下枝に9~14本。頭部と体は櫛鱗(しつりん)で覆われる。側線はよく発達し、尾びれ基底に達する。側線有孔鱗数は27枚。背びれは胸びれ基底上方から始まり、よく離れた2基で、第1背びれは7棘(きょく)、第2背びれは1棘9軟条。臀(しり)びれは第2背びれ起部下方から始まり、2棘8軟条からなる。胸びれは14軟条。腹びれは胸びれ起部下付近から始まる。尾びれの後縁は二叉(にさ)する。頭部と体には頭部から尾部に向かって5本の黒色の縦帯が走る。第1帯は項部(背びれ起部より前の後頭部)から背縁に沿って第2背びれ基底後端まで、第2帯は吻端から目の上縁を通り、尾びれ基底まで、第3帯は吻端から目を横切り、体中央部を走り、尾びれ基底の中央まで、第4帯は上顎前端から目の下縁を通り、胸びれを横切り、尾びれ基底まで、そして第5帯は下顎の前端から腹びれの上を通り、臀びれの起部まで伸びる。第2~4帯は著しく太くほとんどの体側面を覆う。第2背びれと臀びれの基底部は黒い。各ひれは赤みがかっている。浅海サンゴ礁岩礁裂け目や庇(ひさし)の下に単独または対(つい)で生息する。夜間に活動し、小さい底生の無脊椎(むせきつい)動物を食べる。産卵期には対で求愛行動をして、産卵し、雄が口内保育を行う。最大全長は10センチメートルほどになる。

 体側の縦帯の幅がそれらの間の白色縦帯の幅より広いことでタスジイシモチO. novemfasciatusに似るが、本種は第3縦帯の幅が均一であること、すべての縦帯が尾びれに侵入しないことで区別できる。

 スジイシモチ族は、魚類研究者の馬渕浩司(まぶちこうじ)(1971― )らによる2014年(平成26)のDNAの分析結果から、スジイシモチ属のみに対して使われるようになった。本属には本種を含めて日本から26種が知られている。

[尼岡邦夫 2023年9月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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