ムルーク・アッタワーイフ時代(読み)ムルーク・アッタワーイフじだい(その他表記)Mulūk al-Ṭawā'if

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ムルーク・アッタワーイフ時代
ムルーク・アッタワーイフじだい
Mulūk al-Ṭawā'if

11世紀,イベリア半島中南部において,ムスリム諸小王国,土侯国が濫立,抗争を繰返しつつ北のキリスト教勢力と対峙していた時代 (1009~91) をいう。ムルーク・アッタワーイフとはアラビア語で,「小党派の王たち」「群小諸王」の意。 1009年,後ウマイヤ朝の統一権力が崩壊すると,半島内のムスリム諸勢力は,それぞれ小王国を建設し,北アフリカのムラービト朝に征服されるまで抗争し続けた。これらの小王国は少くとも 23に達するが,ベルベル人によるマラガのハンムード朝,グラナダジール朝,アンダルシア人 (アラブ系,および土着のムスリム) によるセビリアのアッバード朝などが有名である。これら小王国の敵対抗争は,キリスト教徒勢力の国土回復運動 (レコンキスタ) の伸長に絶好の機会を与え,85年にアルフォンソ4世に奪われたトレドは,以後ムスリムの手に奪回されることはなかった。援軍の要請とともにこれらキリスト教徒勢力に対抗しようとして同半島に侵攻したムラービト朝軍は,結局これら諸王国を征服し (91) ,以後同半島ではキリスト教徒勢力とムスリム勢力の対立闘争が一層熾烈化していった。政治的混乱にもかかわらず,この時代はイベリア半島におけるイスラム文化の爛熟期で,詩人イブン・ザイドゥーン,神学者イブン・ハズム,歴史家イブン・ハイヤーンなど数多くの文人,学者,宗教家を輩出した。

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