俗文芸において,滑稽を生み出すためにしばしば用いられる手法。一つの語句に異なる二つの意味を持たせる〈地口(じぐち)〉がその基本となるが,二義の取合せがちぐはぐであればあるほど,より効果的に滑稽が生じる。また,表の意味の裏にあるもう一つの意味が同時に感受されねばならないので,〈もじり〉の対象は人口に膾炙(かいしや)された文句が適する。したがって近世の俗文芸では,和漢の古典の〈雅〉の世界に当世の〈俗〉を見立てたり,こじつける趣向の〈もじり〉が多く見られる。たとえば,狂歌の本歌取りがそれで,〈七重八重花は咲けども山吹のみの一つだになきぞかなしき〉を〈山吹のはながみばかり金いれにみのひとつだになきぞかなしき〉と改変することにより,優雅な雰囲気を卑俗な当世風俗に一転させ,そこに滑稽を求めようとするなどである。この手法は戯作(げさく)において滑稽を生み出す有効な方法とされ,伝統和歌や四書五経の〈もじり〉は最も常套的な発想の一つであった。
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執筆者:中野 三敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…前句付に次ぐ雑俳の主要様式として,人情風俗を詠み,とくに上方で流行した。笠付からは,題の5文字を《小倉百人一首》から取る〈小倉付〉,付句を5音にした〈五文字〉,下五を題とする〈沓(くつ)付〉,中にもじりを入れる〈もじり〉,句を連続させる〈笠段々〉などの諸様式が派生した。〈骨折て・明智は天下たゞ三日〉(《住吉躍》),〈憎い事・妾の面ざし有る捨子〉(《冠付かゞみ磨》)。…
…たとえば〈赤いものは,黒いものは,四角なものは〉と3組設問し,解答者は〈四角なものは豆腐の耳,赤いものは和蘭陀人の目〉などと答えるものであった。さらに単純化して享保年間(1716‐36)に〈字もじり〉または〈もじり〉と呼ばれる賭博になった。これは同音の文字(紙と髪,橋と箸)を組み合わせるものであった。…
※「もじり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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