一つの動物個体内に雌雄の生殖器官がともに発達したもの。植物では雌雄同株という。この雌雄同体現象hermaphroditismは下等な種に例が多くみられ,雌雄異体現象gonochorismより原始的な型だと考えられる。ミミズやマイマイは機能的な卵巣と精巣がほぼ同時に成熟するが,これを常時雌雄同体現象という。クロダイや二枚貝のカキは,一度雌ないし雄の機能をした後,雄ないし雌として機能する。雌性が先に成熟するものを雌性先熟protogyny,逆に雄が先なら雄性先熟protandryといい,どちらも隣接的雌雄同体現象という。また,エゾアカガエルは遺伝的な雄の生殖器官もまず卵巣として分化し,変態時に精巣へ転換する。これは,幼時雌雄同体現象と呼ばれる。ヒキガエル類では精巣を除去すると,卵巣の痕跡器官であるビダー器官Bidder's organが機能的な卵巣に発達するので,痕跡的雌雄同体現象という。以上の雌雄同体現象の機構は不明だが,短日処理や高温処理,ホルモン処理によって異常を誘導したり,突然変異体を使うことによって,しだいに解明されつつある。
執筆者:島田 義也
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生物学用語で、同一の個体に雌雄両性の形質がみられる場合をいう。雌雄異体の対語。植物では雌雄同株ともいう。動物では、ミミズのように卵巣と精巣とを同時に備えている場合と、カタツムリのように一つの生殖巣中に卵と精子とをもつ両性腺(せん)を備えている場合とがある。雌雄同体の動物でも、同一の個体内の両性の生殖細胞の間で受精(自家受精)することはほとんどない。ナメクジは、交尾する相手のいないときに初めて自家受精卵を産む。ユウレイボヤでは卵を包む被覆細胞層が自家の精子を通過させにくい。一方、カキやクロダイでは雌雄の生殖巣の成熟期が時間的にずれているため自家受精はおこらない。熱帯魚のソードテールでは性の転換が容易におこり、雌雄を交互に繰り返すことがある。カエルのなかには、幼時にはすべての個体が卵巣をもっており、やがて一部が性転換して雄になるものや、雄の精巣に付随する痕跡(こんせき)器官が卵巣の機能を果たすように発達するものなどがある。雌雄同体の動物では、一般に卵と精子の染色体数は同じで、性染色体の区別もないと考えられる。
[町田武生]
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