日本大百科全書(ニッポニカ) 「モークリー」の意味・わかりやすい解説
モークリー
もーくりー
John Mauchly
(1907―1980)
アメリカの電子工学技術者。世界で最初に実用化された汎用(はんよう)コンピュータENIAC(エニアック)(electronic numerical integrator and calculator)の開発で、エッカートJohn Presper Eckert Jr.(1919―1995)とともに中心的役割を果たした。オハイオ州シンシナティ生まれ。ジョンズ・ホプキンズ工科大学に学び、学位取得後、いくつかの大学講師を務めた。1941年、戦時技術要員計画によりペンシルベニア大学ムーア・スクールで電気工学を学び、教員として残る。当時エッカートは大学院研究生であった。ムーア・スクールとアメリカ陸軍弾道研究所による「電子式数値積分計算機」(ENIAC=Electronic Numerical Integrator and Computer)の開発計画の際に技術者と数学者からなるプロジェクトチームが編成されたが、その全体的な指揮者がモークリーで、主任技師のエッカートが実質的なリーダーであった。弾道研究所側の中心的役割を果たしたのが数学者ゴールドシュタインHerman Heine Goldstine(1913―2004)である。ENIACは1946年に完成したが、1万8800本の真空管を要し、幅100フィート(約30.5メートル)、高さ10フィート(約3メートル)、奥行3フィート(約0.9メートル)という巨大なものであった。
モークリーとエッカートはENIAC完成後、大学を去り共同でエッカート・モークリー社Eckert-Mauchly Computer Corporation(EMCC)を設立して、水銀遅延線を用いた計算機BINAC(バイナック)を開発、ついでUNIVAC(ユニバック)を完成した。UNIVACは最初の商用コンピュータUNIVAC‐Ⅰとして販売された。
[荒川 泓]
『H・H・ゴールドシュタイン著、末包良太他訳『計算機の歴史――パスカルからノイマンまで』(1974・共立出版)』