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電気工学 でんきこうがくelectric engineering

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

電気工学
でんきこうがく
electric engineering

電気,磁気に関する諸現象の工学的な理論と応用を研究する学問。その分野は電気磁気,電気回路,電気材料,発電機電動機,発送配電,電気通信,電気化学,電灯照明,さらに各種電気機械を応用した電気鉄道,電気的機器を利用した自動制御,各種機器関係の測定および測定機器など広範囲にわたっている。またその分科としての電気通信工学において有線無線通信,通信回路理論から,真空管放電管をはじめ半導体の問題に及び,他の諸科学との関連も深い。

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デジタル大辞泉の解説

でんき‐こうがく【電気工学】

電気や磁気現象を動力・熱・光・通信などのエネルギー源として利用する理論と応用を研究する工学の一分野。

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百科事典マイペディアの解説

電気工学【でんきこうがく】

電気および磁気現象に関連した諸現象についての応用技術を研究する学問。電気化学,電気回路,電気計測,照明,電熱,回転機械などの各種電気機器,電気鉄道,発送電関係の諸施設などが対象とされる。
→関連項目工学

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世界大百科事典 第2版の解説

でんきこうがく【電気工学 electrical engineering】

電気現象とその応用を扱う学問,技術の総称。通信工学,電子工学,情報工学を含める場合と,これらを除いて電気エネルギーを中心に考える場合がある。後者の内容は,電気磁気学,電気回路理論,電気材料工学,高電圧工学,電気制御工学,電気機器学,発電工学,送配電工学,電力系統工学,電気応用工学,静電気工学,プラズマ・電磁流体工学などになる。 電気現象の応用は,静電気を用いた治療がもっとも古く,19世紀に入って電池による電流の断絶を用いた電信が実用されたが,電気工学の成立は19世紀末,1880年前後と考えられる。

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大辞林 第三版の解説

でんきこうがく【電気工学】

電気・磁気現象の応用について研究する工学。通信・電力・制御・情報処理など多岐にわたる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

電気工学
でんきこうがく
electrical engineering

電気・磁気現象、電磁波(光)の研究や応用を取り扱う工学の一分野をいう。情報を伝達する媒体としての電気に関する分野、エネルギー伝送媒体としての電気に関する分野に大きく分ける場合は、前者を弱電、後者を強電とよぶ場合もある。狭義の電気工学は電力工学(電気をエネルギーとして扱うための工学分野)を意味する。人間が電気・磁気現象に関心を抱いたのは古く、紀元前にさかのぼる。しかし、それらはおおかた想像の域を出るものではなかった。1600年ギルバートによって『磁石について』が発表され、その後約2世紀の間、摩擦起電器、ライデン瓶、避雷針、動物電気などの発見・実験があった。しかし、いずれも電気・磁気現象の本質をとらえておらず、電気工学の基礎を築くには至らなかった。1785年クーロンによって静電気に関する基本的な実験法則が確立されて以来、エールステッドによる電流の磁気作用の発見(1819~1820)、アンペールによる電流力の法則の発見(1820)、オームによる電気抵抗に関する実験法則の発見(1826)、ファラデーによる電磁誘導現象の発見(1831)、キルヒホッフによる回路網の基礎理論の確立(1848)など、電磁気学の系統的な研究が進んだ。1864年マクスウェルによって電気・磁気現象のいっさいを表す方程式が簡潔な形で提出され、これに基づいて電磁波の存在が理論的に導き出された。1888年ヘルツによって電磁波の存在が実証され、ここに電気工学の基礎をなす現象理論が完成した。その後、スタインメッツによる交流理論(1893)、プランクによる量子論(1900)、アインシュタインによる特殊相対性理論(1905)、シャノンによる情報理論(1948)、スレーターによる強磁性理論(1951)、バーディーンらによる超伝導理論の確立(1957)、またJ・J・トムソンによる電子の発見(1897)、ジャンスキーK. Jansky(1905―1950)による宇宙電波の発見(1931)、ハーン、シュトラスマンによるウランの核分裂現象の発見(1938)などの重要なできごとが、1880年代から1950年代にかけて相次いでみられた。これらの発見および理論を基礎にして電気工学が生まれ、通信技術、電力技術、電子技術、情報処理・制御技術、医用生体工学などに枝分れして発展した。現在では、電気工学の対象はきわめて多岐にわたっており、それぞれが専門分野を形成している一方、各分野は互いに密接に関連しており、各専門分野をはっきりと区別することが困難になっている。
 21世紀に入ってからの電気工学は、コンピュータのさらなる性能向上、コンピュータと無線・有線通信によるネットワークを応用した技術のさらなる発展と、携帯機器の電池駆動時間の延長の例にみられるようなエネルギーの効率的な利用、ソーラーパネルや風力発電のように地球温暖化防止のため二酸化炭素の排出を抑えたエネルギー発生源とその発電電力の変動を抑える蓄電技術の発展、などが重要な課題となり、ますます役割が大きくなっている。[布施 正・吉澤昌純]

通信技術

1809年、ドイツのゼンメリンクは水を電気分解するとき発生する気泡に着目し、多数の電解槽を用意して信号を伝える方法を考案した。これが有線電信の原形と考えられる。1837年モールス符号が考案されて有線電信は実用的な通信手段となり、その後の約40年間は有線電信が電気技術の中心となった。1876年ベルによって電話が発明されて有線通信技術はさらに発展した。このように電気の応用が有線通信技術から始まったのは、初期においては電池が唯一の電源であったため、電気のエネルギーを利用することは実用性に乏しく、大きな電力を必要としない通信の分野で電気が利用されたためであった。
 1888年電磁波の存在が実証されると、放電によって生ずる電磁波を利用した無線電信が考案された。1898年にはマルコーニによって商業無線電信業務が開始された。その後、1906年にアメリカのド・フォレストによって三極真空管が発明されて、低周波から高周波にわたって交流の増幅、発振が可能になり、雑音の少ない高周波が利用できるようになった。これにより、有線・無線通信技術は飛躍的に進歩した。有線通信の分野では、松前重義(しげよし)の提案した無装荷ケーブル方式が、真空管増幅器を利用することにより実現した。無線通信の分野では、真空管の活用によって応用が多様化し、放送、レーダー、テレビジョンと応用分野が広がっていった。また、利用する電波の波長もしだいに短くなってゆき、第二次世界大戦中にはマイクロ波領域まで実用化された。1960年レーザーの発振に成功して以来、各種のレーザーが出現したが、現在では半導体レーザーと、低損失光ファイバーを利用した光通信方式が実用化(1977)され、通信に利用する電磁波の波長は光領域にまで及んだ。一方、人工衛星の実現によって、1962年には能動通信衛星「テルスター」の実験に成功し、無線通信は宇宙にまで広がった。
 これら有線・無線通信技術の発達は情報処理・制御技術の発達と相まって、人対人だけでなく、人対機械、機械対機械の対話を可能にした。[布施 正・吉澤昌純]

電力技術

1799年、ボルタによって電気堆(たい)が発明され、初めて直流電流が得られるようになった。1800年、イギリスのニコルソンとカーライルAnthony Carlisle(1768―1840)はこれを使って水の電気分解に成功した。1802年にはデービーが木炭片を使ってアーク灯の実験に成功した。これらが電気を使って仕事をさせた初期の応用であるが、その規模は実験室の域を出なかった。その後電池の改良が種々行われ、実用性が高まったが、電池は容量、耐久性、取扱いの点に弱点があり、有効な電源とはなりえなかった。そのため、この時代は電気のエネルギーを利用する技術は発達しなかった。その後、1867年、E・W・ジーメンスによって自励式直流発電機が発明され、多量の直流が安定して得られるようになった。またこのころ、エジソンによる白熱電灯の発明(1879)、ジーメンスによる電気鉄道の考案(1879)などがあって、電気エネルギーの利用の道が開かれた。このように電力技術は直流の利用から始まったが、ドイツのドリボ・ドブロボルスキーによって提案された三相交流送電方式は、1891年に行われた実験で、その直流送電方式に対する優位が認められ、交流の実用化が始まった。これによって大量の電力の輸送が効率よく行われるようになり、電力技術が電気工学の中心的役割を担うこととなった。その後の半世紀の間(この時期は通信技術および電子技術が急速かつ広範囲に発展したときであったが)、電力技術の分野では飛躍的な新技術は現れなかったが、1951年アメリカ、アルゴンヌ国立研究所における原子力発電の成功は、電力技術に新局面を開いた。現在では、在来の水力発電、火力発電に加えて、原子力発電が重要な役割を果たすようになっている。しかし、いくつかの原子力発電所の事故を踏まえ、原子力発電をこのまま行うかは世界的な議論の対象となっている。[布施 正・吉澤昌純]

電子技術

1897年トムソンによる電子の発見は、現在のエレクトロニクスの礎(いしずえ)を築く重要なできごとであった。1906年ド・フォレストによってつくられた三極真空管は、電子を利用した最初の巧妙なデバイス(からくり)であった。それからの半世紀の間に、マグネトロン(1921)、ブラウン管オシログラフ(1927)、アイコノスコープ(1933)、電子顕微鏡(1933)、クライストロン(1939)、進行波管(1944)その他自由電子を利用したデバイス(装置)が次々と出現した。エレクトロニクスという語もこの時期に現れた。1948年、ショックレー、バーディーン、ブラッテンによるトランジスタの発明は、それまでの真空管を中心としたエレクトロニクスに大きな変化をもたらした。それは単に、真空管を半導体に置き換えただけでなく、電子回路の超小型化の端緒を開いた。1959年にアメリカ、テキサス・インスツルメンツ社によって最初の集積回路(IC)がつくられて以来、年を追って集積度が高まり、1966年には大規模集積回路(LSI)が、1978年には超大規模集積回路(VLSI)が出現した。集積回路は小型・軽量で信頼性が高く、かつ安価であることから電子技術に革命的変化をもたらし、人工衛星から電気炊飯器に至るまで、ほとんどすべての工業製品に電子装置が組み込まれるようになった。現在ではスマートフォンにみられるように、身の回りの製品に電子回路やコンピュータが組み込まれ、高度な使用に耐えられる性能が求められている。これにこたえるため、マイクロプロセッサーの低消費電力化と処理速度の向上や、プログラムにより変更できる論理回路、新しいタイプの電子回路の実用化など、電子技術はますます重要な役割を担う分野となっている。[布施 正・吉澤昌純]

量子エレクトロニクス

1960年、アメリカのメイマンTheodore Harold Maiman(1927―2007)はルビーを用いてレーザーの発振に成功した。これは、従来の自由電子を利用するデバイスとは異なる誘導放出を利用するもので、量子エレクトロニクスとよばれる分野が誕生した。このあと、固体、液体、気体を用いた各種のレーザーが実現し、赤外線から紫外線にわたってレーザー光が得られるようになり、通信技術、計測技術、加工技術、医学、核融合、芸術などに自然光ではなしえなかった新しい応用面を開いた。[布施 正・吉澤昌純]

情報処理・制御技術

自動制御の考えは、蒸気機関のガバナー(調速機)にみられるように古くからあったが、電気工学の分野では、1932年アメリカのナイキストHarry Nyquist(1889―1976)によって帰還増幅器の安定性が論じられてから発達し始めた。自動制御の方法も、当初はアナログ方式が主であったが、デジタル回路の進歩に伴い、しだいにデジタル方式に移行していった。とくにコンピュータを利用した自動制御技術はロボットの実現をもたらした。1958年アメリカのコンソリデイテッド・コントロール社によって産業用ロボットがつくられて以来、多数のロボットが生産工場で稼動するようになった。
 コンピュータの歴史も古く、1642年にはパスカルによって機械式計算機が考案されたが、自動式計算機は1944年アメリカのエイケンHoward Hathaway Aiken(1900―1973)によってつくられたMARK‐(マークワン)が最初とされている。1941年ごろドイツのツーゼKonrad Zuse(1910―1995)が完成させたZ3(ゼットスリー)が最初という説もある。翌1945年にはノイマンによって蓄積プログラム方式のコンピュータが提案された。1949年、イギリスのウィルクスMaurice Vincent Wilkes(1913―2010)によって最初のプログラム内蔵方式のコンピュータEDSAC(エドサック)がつくられ、現在に至っている。このころ出現した半導体デバイスはただちにコンピュータに取り入れられた。1959年には、全トランジスタ化したコンピュータIBM1401が完成した。半導体を使用することによってコンピュータの信頼性が著しく向上し、コンピュータは実用化の時代に入った。また、半導体技術の進歩は集積回路を生み出し、これを利用することによって高速大型コンピュータが実現した。一方、1969年にはLSIを利用したマイクロプロセッサーが考案され、1971年にはマイクロプロセッサーを使ってマイクロコンピュータ、いわゆるパーソナルコンピュータ(パソコン)が出現した。その大きさは時代につれ小型化され、膝(ひざ)の上にのせられるコンピュータという意味のラップトップ型、ノート型、そして、コンピュータに携帯電話機能をもたせたスマートフォンの出現に至っている。
 このようにコンピュータの進歩は、一方で大規模な情報処理を可能にし、たとえばコンピュータ断層撮影computed tomography(CT)装置のように、コンピュータなしでは不可能な診断装置を実現させており、さらに画像処理等による機能の高度化にも役だっている。また、最先端の技術による演算速度がきわめて高速なスーパーコンピュータは、気象予報、自動車、船舶、航空機、高層ビル、原子力などにおいて設計やシミュレーションに使われ、これまでより精度の高い予報、安全性が高くより燃費のよい自動車、船舶、航空機、地震に強い高層ビル等の実現に役だっている。さらに、分子設計や遺伝子解析などバイオ、化学分野での活用も盛んであり、医療の高度化や新素材開発に果たす役割が大きくなっている。他方では、パソコンやスマートフォンのように小規模の情報処理を個人単位に提供し、さらには超小型のコンピュータをいろいろな機器に組み込み、場合によってはそれらをネットワークにより接続し、互いに協調作業を行うシステムをも可能としている。たとえば、自動車のネットワーク接続による交通事故がなく渋滞しない交通システムの構築が取り組まれており、このような応用が広がりつつある。[布施 正・吉澤昌純]

医用生体工学

ツウォリキンによって提唱された医用電子工学(ME)は、第二次世界大戦後に誕生した電気工学の一分野であるが、現在では医用生体工学(BME)に拡張され、学際的な先端技術として成長を続けている。これには病気の診断技術の基礎となる生体計測、生体情報処理、生体の機能を代行する技術の基礎となる生体作用、人工生体器官、生体のメカニズムを解明するための生体現象、生体物性、治療のための医用システム、安全性を高めるための人間工学などの諸分野を含んでいる。これらすべての分野で、電気工学がなくてはならないものとなっている。現在のBMEは、工学・技術を生体に適用する方向の考え方が中心をなしているのに対し、生体の機能を手本にした情報処理技術の開発や、生体を機能素子として利用する研究も行われている。[布施 正・吉澤昌純]
『関英男著『電気の歴史』(1977・日本放送出版協会) ▽水島宣彦著『エレクトロニクスの開拓者たち』(1985・電子通信学会) ▽高橋雄造著『電気の歴史――人と技術のものがたり』(2011・東京電機大学出版局)』

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