モーセル(読み)もーせる(英語表記)Edvard I. Moser

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーセル」の意味・わかりやすい解説

モーセル(Edward I. Moser)
もーせる
Edvard I. Moser
(1962― )

ノルウェーの神経科学者。オーレスン生まれ。ノルウェー科学技術大学カブリ統合神経科学研究所・ニューロコンピューティングセンター所長。妻は同じ神経科学者のマイブリット・モーセル。

 1990年オスロ大学で心理学を学び、1995年神経生理学で博士号を取得。1994年からエジンバラ大学神経科学センターのポスドク研究員(博士研究員)となり、ロンドン大学教授ジョン・オキーフの下で客員ポスドク研究員となった。1996年にノルウェー科学技術大学の生物心理学の準教授になり、1998年に神経科学の教授に就任。空間を認識する脳のメカニズムの研究に取り組んだ。

 1971年にオキーフは、ラットの実験で脳の海馬(かいば)の中に場所を特定して活発になる「場所細胞place cell」があることを発見したが、エドバルド・モーセルは妻とともにこの研究を発展させ、海馬の近くにある神経細胞が場所を示すときに活発になり、その場所を線で結ぶと格子(こうし)模様になることを発見した(2005)。これは「格子細胞(グリッド細胞grid cell)」とよばれるようになった。そして、場所細胞や格子細胞の活動によって、あたかもGPS全地球測位システム)のように居場所目的地へ行く道筋がわかるようなメカニズムが脳内にあることを解明した。2014年「脳における空間認知システムを構成する細胞の発見」の業績により、妻のマイブリット・モーセル、ジョン・オキーフとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。

[馬場錬成 2015年2月17日]


モーセル(May-Britt Moser)
もーせる
May-Britt Moser
(1963― )

ノルウェーの神経科学者。ムーレ・オ・ロムスダール県生まれ。トロンハイム神経計算センター所長。夫は同じ神経科学者のエドバルド・モーセル。

 夫とは高校時代の同級生であり、いっしょにオスロ大学に入り心理学を学んだ。大学時代に結婚して1995年に博士課程を修了するころには2人の娘が生まれていた。1994年に夫とともにイギリスに渡り、ロンドン大学教授のジョン・オキーフの下で研究員となった。1996年にノルウェーに帰国して2000年からノルウェー科学技術大学の教授となった。

 マイブリットは夫と二人三脚で研究を行い、オキーフが1971年に発見した「場所細胞place cell」の機能がどのように活発化するかの研究を発展させた。夫妻は場所細胞の近くにある神経細胞が、動物の行動に従って場所細胞と呼応するように働いていることを発見した(2005)。その細胞が活発になった場所を線で結ぶと格子(こうし)状になることから、それは「格子細胞(グリッド細胞grid cell)」とよばれるようになった。そして、場所細胞と格子細胞が脳内GPS(全地球測位システム)のように働いて居場所や目的地への行き方を認知させることを解明した。2014年「脳における空間認知システムを構成する細胞の発見」の業績により、夫のエドバルド・モーセル、ジョン・オキーフとともに、ノーベル医学生理学賞を受賞した。

[馬場錬成 2015年2月17日]

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