日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキーフ」の意味・わかりやすい解説
オキーフ(John O'Keefe 神経科学者)
おきーふ
John O'Keefe
(1939― )
アメリカおよびイギリスの神経科学者。ニューヨーク市生まれ。1967年にカナダのマクギル大学で博士号を取得。イギリスのロンドン大学に移り1987年から教授。
1960年代後半から、ラットの行動と脳内の神経細胞が活発になる状態を研究し、1971年にラットが部屋の特定の場所にいるときにだけ活発に働く神経細胞である「場所細胞place cell」を海馬(かいば)の中に発見した。場所細胞は多数あるが、ラットの位置によって活発になる場所が異なっており、脳内に地図をもっているような機能の発見であった。さらにこの研究を発展させて、ラットが動くとそれに対応するように場所細胞がタイミングよく活発化していく状況を神経細胞のθ(シータ)波(4~7ヘルツの脳波)の振動する状況から示した。
オキーフの研究室に来ていたノルウェーの神経科学者であるモーセル夫妻(エドバルド・モーセルおよびマイブリット・モーセル)は、これを発展させて海馬の近くにある嗅内(きゅうない)皮質とよばれる場所に場所細胞と呼応するように活発になる「格子(こうし)細胞(グリッド細胞grid cell)」があることを発見した。オキーフの発見した場所細胞とモーセル夫妻が発見した格子細胞の活動により、脳内で居場所や目的地を認知していることがわかった。2014年「脳における空間認知システムを構成する細胞の発見」の業績で、モーセル夫妻とともにノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成 2015年2月17日]
オキーフ(Georgia O'Keeffe 画家)
おきーふ
Georgia O'Keeffe
(1887―1986)
アメリカの女流画家。自然主義に基づく幻想的半抽象絵画の開拓者の一人。ウィスコンシン州サン・プレイリーに生まれる。フェノロサの影響を受けたダウから東洋の造形原理を教えられ、1917年、スティーグリッツの主宰する画廊「291」で初の個展を開く。24年スティーグリッツと結婚し、西欧系のモダニズムとは直接関係のない自然主義的な半抽象、または抽象幻想主義ともいえるイメージを開発した。29年以来ニュー・メキシコの乾いた風土に取りつかれ、スティーグリッツと死別した46年からニュー・メキシコの砂漠の中に隠棲(いんせい)して、制作を続けた。
[桑原住雄]
『オキーフ著、松岡和子訳『オキーフ画集』(1982・小学館)』▽『ローリー・ライル著、道下匡子訳『ジョージア・オキーフ』(1984・PARCO出版)』