デジタル大辞泉 「海馬」の意味・読み・例文・類語
かい‐ば【海馬】
2 タツノオトシゴの別名。
3 大脳辺縁系の一部で、側脳室の近くにある部位。古皮質に属し、本能的な行動や記憶に関与する。形がタツノオトシゴに似ることから、16世紀にイタリアの解剖学者アランティウスが命名した。アンモン角。
[補説]3で、形が神話の海馬ヒッポカンポスに似るところからいうという説もある。
翻訳|hippocampus
「物品識名」に「トド 海獺の年を経たるものを云」とあるように、古くはアシカが成長してトドになったと考えられていた。
脳の内部にある古い大脳皮質部分で,その原始型は魚類や両生類にもみられる。ギリシア神話に登場する海神ポセイドンが乗る海の怪物ヒッポカンポスHippokamposの下半身についている魚の尾の形にこの部分が似ているので名づけられた。海馬にはさらに海馬采,海馬足,海馬鉤などの部分的名称が与えられている。
海馬は,昔から嗅覚(きゆうかく)機能に関与するとされてきたが,嗅覚系の発達のよくないヒトやクジラなどにもよく発達しており,嗅覚との関連は薄いものである。海馬は,自律系作用,情動の発現およびそれにともなう行動,さらには短期記憶(その保持と再生)にも関連し,種々の感覚入力に応じて,時間および空間情報を認知し一種の統御作用(連合形成)を行うといわれている。その処理機構(学習)を通じて,個体は環境に対して順次適切な運動反応を行うことができる。
海馬は,ヒトでは側脳室の下角底にそって広がり,内方に包みこまれている。海馬の領域範囲は外見上はっきりしているが,隣接域との境界は必ずしも明確ではなく,〈海馬形成〉とか〈海馬領域〉とかいう名称が,固有の海馬に歯状回や海馬台(海馬支脚)を含めて,通常用いられている。また,隣接域である梨状葉皮質後部にあたる部分を内嗅野といい,ここも〈海馬領域〉に含められる。海馬の構造は,新皮質にくらべて単純であり,表層から,海馬白板,内叢状層,錐体細胞層,放射状層,分子層(外叢状層)に分けられる。さらに皮質内の構造上の差により,CA1,CA2,CA3,CA4に区別される。
本来の海馬に至る神経繊維は内嗅野からのものが最大であるが,そのほかに,脳弓を経由して中隔野,視床下部から入るものと,帯状回から来るものがある。また,青斑核や縫線核からおこり内側前脳束を経由して,それぞれノルアドレナリンおよびセロトニンによって作動される神経繊維が海馬に入ることが知られている。海馬からの遠心性の神経繊維としては,脳弓を経由して乳頭体に至る繊維束が有名である。ほかに,中隔野,視床下部,視床前核に至る神経繊維もある。
執筆者:川村 光毅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ウマのような大きな海産動物の意。セイウチ(海象)、アシカ(海驢)、ジュゴン(儒艮)にも用いられるが、最近は胡櫞にかえてトドの漢名として定着しつつある。タツノオトシゴの異名でもある。
[伊藤徹魯]
(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…この状態になると音刺激ではなかなか起きないが,肉のにおいをかがせると目覚める。 大脳辺縁系(海馬)を刺激すると,寝場所を探し,毛づくろいをするなどの行動がひき起こされる。大脳核のなかの尾状核の刺激では静止状態がひき起こされる。…
※「海馬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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