改訂新版 世界大百科事典 「モープー」の意味・わかりやすい解説
モープー
René Nicolas Charles Augustin de Maupeou
生没年:1714-92
フランスの政治家。パリ高等法院院長の息子として生まれ,自身も1763年より同じ職を務めた後,68年大法官に就任。ルイ15世の寵姫デュ・バリ夫人の支持を得て政敵ショアズールを失脚させ,財務総監テレー,外務卿エギュイヨンとともに三頭政治を形成した。彼は法服貴族の出であったが,王権の強化のためには特権身分の牙城である高等法院の力を制限することが必要と考え,71年より司法制度近代化のための改革に着手し,王権に特に反抗的な法官の追放,売官制によらず国王により任命される裁判官で構成される〈高等評定院〉の創設,それに伴う高等法院の管轄権縮小,謝礼の廃止による裁判の無料化などを行った。しかし,この改革は,モープーに支持を与えていた国王ルイ15世が逝去すると特権身分の強い反対により撤回され(1774),モープーも罷免されたため,十分な効果を挙げるまでには至らなかった。
執筆者:林田 伸一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報