日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユーステノプテロン」の意味・わかりやすい解説
ユーステノプテロン
ゆーすてのぷてろん
[学] Eusthenopteron
肉鰭(にくき)綱総鰭亜綱オステオレピス目ユーステノプテロン属の魚類。ヨーロッパと北アメリカの古生代デボン紀の地層から化石が発見されている。体長は60センチメートルに達する。グリーンランドのデボン紀後期の地層から発見された初期の両生類イクチオステガとの比較から、長い間、両生類の祖先と考えられていた。そのおもな理由は頭部骨格の配列状態や胸びれと腹びれの内部骨格などの類似のためである。また、歯の構造は両生類の迷歯類によく似ていた。しかし、1981年にアメリカのローゼンDonn Eric Rosen(1929―1986)らによって、両生類は総鰭類よりも肺魚に近縁であるとの有力な説が出された。そのおもな理由に、肺魚類の内鼻孔の存在や左右の腰帯の癒合など両生類との20もの共有派生形質があげられている。その後、いくつかの保存状態のよい原始的肉鰭類の化石が発見され、四足動物の祖先をめぐる論争が続いている。
[籔本美孝]