日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラティヌス」の意味・わかりやすい解説
ラティヌス
らてぃぬす
Latinus
古代ローマ周辺地域の民族ラティニィ人の王、またこの種族の祖。その系譜はさまざまで、英雄オデュッセウスと魔女キルケとの子、あるいは牧神ファウヌスとニンフのマリカとの子などとされる。妻アマタとの間にもうけた娘ラウィニアは、同じイタリアのルトゥリ人の王トゥルヌスに求婚されたが、ラティヌス王は神の預言を信じてトロヤ人の英雄アイネイアス(アエネアス)を婿として歓待し、結婚の約束をした。やがて戦争が起こり、一騎打ちでトゥルヌス王を破ったアイネイアスは、ラウィニアを妻として王位を継ぎ、ローマの前身都市であるラウィニウムを築いた。のちにラティヌスは、ユピテル・ラティアリスという名の神となった。
[小川正広]