空気中を高速度で進行するときの前進圧(ラム圧)を利用して空気を圧縮し、それに燃料を吹き込んで燃焼させて推力を得るジェットエンジンで、パルスジェットとともにダクトエンジンの一種。空気圧縮機もそれを駆動するタービンも不要で、単なる筒(ダクト)でよく、この中にディフューザーとフレームホルダーを取り付けたきわめて簡単な構造で重量も軽くできる。しかし、エンジンを始動するには空気を適当な圧力まで圧縮するラム圧が必要なこと、つまり、あらかじめかなりの高速度を与えないとエンジンを運転するのに必要なラム圧が得られないこと、したがって離着陸のような低速飛行中の運転ができないこと、運転中の燃料消費量や運転時の騒音がきわめて大きいことなどの欠点がある。そのため通常のジェットエンジンと組み合わせて使用することが多いが、現在はごく限られた用途以外には用いられていない。だが、速度が速いほど効率がよくなること、構造が簡単で軽量であることなどの特長を生かすと、音速の3~8倍程度の超音速機のエンジンとしては適当なので、将来は改良されて実用化される可能性もないとはいえない。
[落合一夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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