改訂新版 世界大百科事典 「ラメート族」の意味・わかりやすい解説
ラメート族 (ラメートぞく)
Lamet
ラオス北西部の山岳地帯に分布する人口6000余りの少数民族。アウストロアジア語族のモン・クメール語族に属するラメート語を使用している。1年耕作した土地を12~15年休閑地にする方式の焼畑耕作を行い,もち米,アワ,キャッサバ,タロイモ,ヤムイモなどをつくっている。山間の平地に平均14~15戸の集村をつくる。村落中央の広場には男子用集会所が設けられる。焼畑耕作の作業は共同で行い,土地はすべて共有になっている。父系の単系出自集団をもち,これが外婚の単位になっている。母方交叉いとことの婚姻を行う規制婚の慣行がみられ,単系出自集団は互いに嫁の与え手と受け手の関係で連鎖的に結びついており,嫁の与え手は受け手に対して優位に立つ。つまり構造主義者のいう一般交換(非対象交換)が典型的に見られ,インド,ミャンマー国境のプルム族などと並んで注目を集めている。夫方から妻方に対して支払われる花嫁代償の反対給付として,妻の父親が夫に対して槍(女財)を与えるが,その際犠牲を屠(ほふ)る儀礼を行う。これによって,妻方集団が生まれてくる子どもたちに対してもつ儀礼的権威が象徴的に確認される。婚姻ののち,花嫁代償の支払がすむまでの間,妻方居住が行われるが,支払終了とともに夫方居住になる。水牛,銅鑼(どら)を蓄えることによって村内で富者階層レムの位階に上ることができる。アニミズムが強くみられ,屋敷,村落の守護霊や自然物に宿る精霊への供犠が重視されている。村の長セミアの主たる任務も村落の守護霊への供犠と祭場の管理である。
執筆者:小野沢 正喜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報