守護霊（読み）シュゴレイ

デジタル大辞泉

しゅご‐れい【守護霊】

心霊主義的な考えに基づいて、人に付き添い、その人を見守っているとされる霊。
[補説]心霊研究家浅野和三郎（1874～1937）が英語「guardian spirit」の訳語として提唱した語。背後霊・地縛霊なども守護霊に伴って作られた語という。

出典　小学館

改訂新版　世界大百科事典

守護霊 (しゅごれい)

特定の人物，事物，場所などを守護する霊的存在。神統＝神的階層（パンテオン）の上位を占めている存在は守護神と呼ばれることが多い。人物の守護霊には誕生とともに個人に付属するものがある。へその緒や〈えな〉が生涯の守護霊として，個人をあらゆる不幸・災害から守るとする例は，日本をはじめ世界各地に分布する。干支（えと）と結びついた神仏を個人の守護霊とする例は現代の日本にも見られる。ユダヤ教の守護天使やキリスト教の守護聖人は個人の守護霊であると同時に，土地，職業，自然などの守護神ともされる。未開民族においては，オマハ・インディアンのように，思春期の幻覚や夢に現れた動物霊が各個人の守護霊とされるという類の例が少なくない。ワシを守護霊とした者は敏感・鋭利，熊を守護霊とする者は鈍感・怠惰な性格の持主になるという。

　事物，場所などを守護する霊的存在として，ギリシア（ローマ）において商業，学術，雄弁，体育などをつかさどり，盗人，羊群，旅人の守護神としてのヘルメス（メルクリウス），炉・かまどの神ヘスティア（ウェスタ），戦争の神アレス（マルス），国家・民族の神ゼウス（ユピテル）などが知られている。日本の氏神，産土（うぶすな）神，鎮守神は家や土地の，天満天神は学問，教育，文化の，稲荷神は農工商の，八幡神は軍事，武道の守護神として知られる。

　守護霊の典型的な例は各地のシャーマンに見られる。一般にシャーマンは守護霊の援助と指示により役割をはたす職能者だからである。シャーマンと守護霊との関係確立の仕方には大別して三つの型が見られる。（1）召命型　守護霊がある人物を選んでシャーマンになることを促す場合で，当人は心身異常に陥り，しばしば夢，幻覚，幻聴に守護霊が現れるのを体験する。先輩シャーマンの判断などにより当人がシャーマンになると心身異常は消え，守護霊はその後，彼（彼女）を援助するにいたる。断ると異常は激化し，死にいたることさえあるという。（2）修行型　自己の意志または親族・縁者の勧めでシャーマンになる場合で，数ヵ月から数年間先輩シャーマンの下で修行し，トランスへの入り方，呪文の唱え方などを学習，最終段階において神霊・精霊をみずからに憑依させる儀礼を行い，そのとき憑依した神霊・精霊が彼（彼女）の守護霊となる。（3）世襲型　シャーマン職が一定の家系に属しており，守護霊は代々継承されてゆく場合で，継承の過程には召命型，修行型の特徴が現れることが少なくない。

　シャーマンと守護霊との関係は，インドのサオラSaora族におけるように，夫婦関係，主従関係にあることもある。シャーマンは守護霊の外に使役霊，補助霊をもつことがある。守護霊の力を借りてより下位の諸精霊を使役，駆使するもので，日本の修験道シャマニズムに関していえば，修験者の主尊不動明王は守護霊に相当し，諸眷属は使役霊，補助霊に当たる。広義における守護霊には使役霊，補助霊が含まれることが多い。
→シャマニズム
執筆者：佐々木 宏幹

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

百科事典マイペディア

守護霊【しゅごれい】

個人や地域や職業を守る霊的存在。守護神として崇拝されることが多い。バビロンのマルドゥク，ニネベのイシュタルのように古代オリエント諸都市は守護神をもち，ギリシア・ローマでは文明の発展に伴って神々に特定の機能を付与した職業神も出現した。戦争のアレス（マルス），商売のヘルメス（メルクリウス），技芸のアテナ（ミネルウァ）等が著名。キリスト教の（守護聖人）は個人の守護神の一種と考えられる。日本では，個人の守り神として観音・薬師・不動・妙見等が，地域の守り神として氏神があり，武甕槌(たけみかづち)神・経津主(ふつぬし)神・八幡神は武術の，菅原道真は学芸の守り神であった。守護霊はシャマニズムで特に大きな役割を果たす。

出典　株式会社平凡社

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

守護霊
しゅごれい
guardian spirit

特定の個人や事物，場所を守護する霊的存在。人の場合は，へその緒など誕生にかかわるものを守護霊とする例が世界各地にみられるほか，思春期の幻覚や夢に現れた動物を守護霊とし，その動物の特性を身につけることで人格が完成されるとする北アメリカインディアンの例が有名。これは個人を対象とする点で，社会集団にとってのトーテムとは区別される。また，みずからに憑依した守護霊の援助・指示によってその役割を果すシャーマンの存在も知られるが，この守護霊は世襲されることもある。日本における場所や事物の守護霊としては，家や村の神である氏神や学問を司る天満天神など，守護神への信仰があげられる。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

世界大百科事典（旧版）内の守護霊の言及

【神】より

…氏神の個性は，明らかに，氏神をまつっている集団の性格を反映していると推察される。氏神は，氏族を守護する典型的な守護霊の機能をその基盤にもっているのである。ところでタマの立場から見た場合，古代には和魂（にぎみたま）と荒魂（あらみたま）の対立があった。…

【建築儀礼】より

…手足の骨はY字形の枝に横棒としてのせた。おそらく殺された者がこの建物の守護霊になるのであろう。ニューギニアのキワイ･パプア族の神話によると，ある神が殺され，死の旅路にのぼる最初の神となり，自ら変身して死後の世界を創り，この死後の世界を現世で模したのが祭儀舎屋だという。…

※「守護霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」