日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラリオノフ」の意味・わかりやすい解説
ラリオノフ
らりおのふ
Mikhail Fedorovich Larionov
(1881―1964)
ロシア生まれのフランスの画家、舞台装置家。モルダビア(1991年以降モルドバ共和国)のチラスポリ近郊に生まれる。モスクワ絵画・彫刻・建築学校でセローフおよびレビタンに師事、後期印象派風の仕事を始めたが、1906年にパリへ行き、フォービスムと素朴派に影響され、田舎(いなか)の風景や兵士の生活をプリミティブなタッチで描いた。その後、夫人のゴンチャロワNatalia Sergeevna Goncharova(1881―1962)とともにモスクワの「左翼的」画家たちによる「ダイヤのジャック」「ロバの尻尾(しっぽ)」などの展覧会を組織した。11年、抽象芸術の一派たるルチズム(レイヨニスム)を提唱した。ロシア未来派の詩人たちの詩集装丁を手がけるなど、革命前のモスクワ前衛美術運動の中心的存在だったが、15年にパリに移住し、その後は夫人とともにディアギレフのロシア・バレエ団のための舞台装置を手がけた。絵画の代表作は『休息する兵士』(1911・モスクワ、トレチャコフ美術館)。38年フランス国籍を得、パリに没した。
[木村 浩]